富江 replay

2000/01/26 東映第1試写室
宝生舞演じる新生・富江が観客を再び恐怖のどん底に!(笑)
これと『うずまき』が2本立てで公開される恐怖。by K. Hattori


 菅野美穂主演で昨年製作され、単館系でそこそこお客が入った『富江』の別バージョン。続編ではなく、リメイクでもなく、これは「replay(やり直し)」なのだ。前作と共通しているのは、モンスター“富江”の設定だけ。美貌で男たちを惑わし、殺されてもその組織断片から何度も何度も再生を繰り返す富江。原作は伊藤潤二の同名コミック・シリーズで、原作の方も富江という共通のキャラクターを使った連作になっているようだ。この調子なら、何本でも映画が作れるだろう。今回は富江役が菅野美穂から宝生舞にバトンタッチしているが、役の基本は同じだ。どちらの富江が好きかは趣味の問題でしょうけど、僕は前作の方がよかったかな……。

 前回の映画は青春群像ドラマだったが、今回は病院が舞台のミステリーになっている。救急患者としてかつぎ込まれた少女の異常に肥大した腹部。そこから取り出された女の生首。やがて病院からは院長の姿が消え、立ち会った看護婦も全員が退職し、この手術に関わった後も病院に残っていた医師は精神を病んで自殺する。いったい手術室で何があったのか? 病院長の娘・由美は、自殺した医師が残した父のノートから、富江という女が事件の重要な手がかりになっていることを知る。同じ頃、病院内で不穏な噂話が囁かれている中、病気で入院中の友人・文仁を見舞いに来た健三は、全裸のまま助けを求める若い女と出会う。彼女の名は富江。自分の部屋に彼女をかくまった健三は、彼女を独占するためには彼女を殺さなければならないとう、異常な強迫観念に取り憑かれてしまう。父を捜す由美と、同じく連絡の途絶えた健三を探す文仁は、富江について調べ始めるのだが……。

 同じ原作者の『うずまき』と同時上映される映画だが、どちらかと言えばこちらの方がメインなのかな。映画としては破綻していた『うずまき』に比べると、この『富江 replay』は普通につまらない映画になっている。物語としての破綻は随所にあるが、映画としては壊れきることなく原型の概観を保っている。この映画は単純にぬるい映画で、お話もぬるければ、恐怖描写もぬるく、エロチックな描写もぬるい。すべての描写が観客の感じる恐怖の閾値に達していない。唯一恐かったのは菅田俊演じる病院長が狂っていく場面だけど、この俳優は登場しただけで何かしら恐いんだから、どの程度までが演出によるものかわからない。とにかく恐いのはここだけなんだから、たぶん俳優が恐かったんだろうと思う。

 この映画は、いったい何が恐いと思って作ったんだろうか。僕はこの映画から、「○○で恐がらせちゃうぞ!」という作り手側の意図や仕掛けがまったく読みとれない。それって僕が鈍感なのかなぁ。作り手の意図がはっきりしていれば、それに乗っかって一緒に面白がったり恐がってみせたりすることもできるんだけど、それがまったく見えてこないから、ただボンヤリと画面をながめているしかない。う〜ん、ぬるい映画だなぁ。『うずまき』とどっこいどっこいだ。


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