年下のひと

2000/02/01 松竹試写室
ジュルジュ・サンドと詩人ミュッセの愛の破局を描いたドラマ。
主演はジュリエット・ビノシュ。見応えあり。by K. Hattori


 19世紀フランスの女流作家ジョルジュ・サンドと、詩人ミュッセの運命的な恋を描いたラブストーリー。サンドは作曲家ショパンとの恋が有名で、日本人はショパン経由でサンドを知っていることの方が多いと思うのだが、この映画は彼女がショパンと出会う前の恋愛事件を描いている。サンドを演じるのは『イングリッシュ・ペイシェント』でオスカーを受賞したジュリエット・ビノシュ。ミュッセを演じるのはブノワ・マジメル。ビノシュはレオス・カラックスとの関係などでも知られる恋多き女だが、その彼女が恋多き女の元祖であるジョルジュ・サンドを演じるのだから配役としてはベスト。この主演カップルは私生活でも親しくなって、子供まで生まれてしまったそうな。

 物語はサンドが夫と別れ、子供ふたりを連れてパリに出てきたところから始まる。女流作家としてセンセーショナルなデビューをした彼女には敵も多かったが、そんな中で彼女の資質を最も的確に理解し、彼女の信奉者となったのが6歳年下の詩人ミュッセだった。ふたりは急速に惹かれ合うのだが、互いの激しい気性がしばしばふたりの関係を脅かす。ふたりはベネチアへの旅行に出かけるのだが、ミュッセは熱病のような放蕩への傾倒を押しとどめることができず、サンドを愛しながらも傷つけ、自らの愛と嫉妬心とでボロボロになって行く。サンドとミュッセのベネチア旅行は、当時のフランス社交界と文学界で大いに話題になったらしい。しかし愛を確かめ深め合うはずのこの旅行がもとで、サンドとミュッセは別れてしまう。ふたりの関係は足かけ3年に渡る短いものだった。映画もこの旅行を中盤のクライマックスにし、サンドとミュッセが傷つけ合いながらも別れと再燃を繰り返す恋の修羅場をたっぷりと見せる。

 主人公たちが知り合った直後から、周囲の家族や友人たちはこの新しいカップルの破局を予言する。観客もふたりが別れることを知っている。この映画は熱烈に愛し合ったカップルがいかにして別れるかというドラマです。この映画に登場するミュッセは、自堕落な放蕩生活の中で身を持ち崩し、その中から珠玉の名作を生み出す若き天才作家です。彼はサンドを愛しながらも金で女を買い漁り、阿片に溺れる。サンドを突き放し、足蹴にし、それでも彼女が自分を愛してくれることを願う。ミュッセはサンドから無条件に愛されている自分を確かめるために、わざと放蕩の中に突進し、彼女に辛くあたって傷つける。それでも彼女が自分を愛してくれることを確認して安心する一方、彼はそのままサンドが自分から離れていく恐怖も抱え込んでしまう。この気持ちの葛藤が、結局は彼を滅ぼしてしまったように思える。

 19世紀の風景を再現した美術が見事。歴史上のサンドやミュッセの関係からベネチア旅行を大きくクローズアップしつつ、その他の部分を大胆に脚色してしまった脚本の割り切りもいい。監督は『彼女たちの関係』のディアーヌ・キュリス。2時間18分の大作です。

(原題:Les Enfants Du Siecle)


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