スペーストラベラーズ

2000/03/06 東映第1試写室
銀行強盗に失敗した3人組が人質を取って行内に立てこもる。
監督は『踊る大捜査線』の本広克之。by K. Hattori


 『踊る大捜査線 THE MOVIE』の本広克之監督が、期待を一身に受けて放つ最新作。銀行強盗に入った3人組が、段取りの悪さや銀行側の意外な対応から、銀行に閉じこめられて身動きがとれなくなってしまうという物語。この設定そのものは、まったく目新しさがない。世界中で何百本と作られた銀行強盗映画の何割かは、犯人たちが脱出路を失って人質たちと籠城することになる。籠城した犯人たちと人質との間には、やがてコミュニケーションが生まれる。これもまた、お決まりのパターン。ここまで決まり切ったパターンで攻めてくるからには、その後に何らかの仕掛けが用意されていると考えるのが人情。しかしこの映画、観客の期待に応えるだけの仕掛けがありません。多少のヒネリはあるのですが、そこから別の話が始まることなく、単なる目先の変化で終わっている。僕は『踊る大捜査線 THE MOVIE』をとても面白い映画だと思ったので、今回の新作にも非常に大きな期待をしていた。でもその期待は裏切られました。この映画、つまらなくはありません。でも面白くもないです。

 キャストは豪華。銀行強盗3人組の顔ぶれが、金城武・安藤政信・池内博之。人質の中には深津絵里・渡辺謙・筧利夫・鈴木砂羽らがおり、逃げ出して通気ダクトに隠れた濱田雅功、地下金庫に閉じこもったガッツ石松と大杉蓮がいる。他にも映画やテレビで見知った顔が、次々に登場。これで面白くなきゃどうかしてますが、でも実際に面白くないんだからしょうがない。それぞれのキャラクターが小粒にまとまってしまい、突出した面白さが感じられないのは大きな欠点。それぞれに見せ場は用意されているのに、それがまったく生きていない。そもそも、強盗3人組のリーダーである金城武に、まったくカリスマ性や魅力が感じられないのも問題だよ。

 原作はこの映画にも出演しているお笑い集団ジョビジョバが、5年前に上演した舞台「ジョビジョバ大ピンチ」というお芝居。今回の映画はそれをベースに、脚色したものだというのだが、エピソードの組立がギクシャクしていちいちポイントを外しているような気がする。それぞれの狙いはわかるのだが、それが落ち着くべき場所に落ち着いていない。気持ちいいツボから少しずつズレているのだ。そのくせ演出にはやけに力が入っている。音楽をほぼベタで付けているのも、そうした力みの現れだろう。しかしそこで押しているのが気持ちいいツボからずれているから、観ている方は気持ちよくないどころか、むしろ苦しくて辛い目を見ることになる。タイトルにもなっているアニメ番組と銀行内のリンクも、あまりうまく機能していない。だからエピローグの感動も薄いものになってしまう。困った映画です。

 銀行強盗が籠城するというこの手の映画の場合、観客の関心は犯人たちがどうやってそこを脱出するかに向けられる。アリの這い出る隙間もない包囲網の中を、どうかいくぐって外に飛び出すか。その点、この映画がやっていることは非常に手抜きだと思う。まことに残念。


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