ジョン・ジョン・イン・ザ・スカイ

2000/03/10 シネカノン試写室
知的障害を持つ女性と少年の交流を描いたドラマ。
日本人が製作したアメリカ映画。by K. Hattori


 テレビ東京系の映画情報番組「シネマ通信」のレポーター、ジェファソン・デイビスの監督・脚本作品。彼は10年ほど前にも1本映画を監督しているらしいが、今回の作品が初めての長編監督作品になるらしい。物語の舞台はミシシッピーの田舎町。登場人物は全員アメリカ人で、台詞もすべて英語のアメリカ映画だが、製作と出資の主体は日本という映画。きちんと真面目に作っている映画ですが、僕はだいぶ物足りなかったなぁ。

 主人公は“ジョン・ジョン”ことジョン・クレイボーン。物語は現在の彼が、少年だった30年前の自分を思い出すという構成だ。1968年の夏、ジョン・ジョンは、知的障害のある32歳の女性ゼオラと親友同士だった。都会の暮らしにあこがれる母親と、家庭の中で横暴に振る舞う父。小さな田舎町を脱出したいと願うジョン・ジョンは、本物の飛行機を作って町を飛び立つという夢を持っていた。ジョン・ジョンはゼオラとふたり、納屋の中で手作り飛行機を作り始める。父と母の不仲や父と子の葛藤が、親子2代に渡って(ひょっとしたら祖父から3代に渡って)繰り返されるという不幸。'60年代の音楽や文化を背景に置きながら、それらと無縁の生活を送っている田舎町の生活ディテールを描いた面白さ。映画の中には面白くなりそうな要素がたくさんあるのに、それがあまり生かされていないのが残念。

 そもそも「知的障害のある大人と少年の交流」という話自体が陳腐。この手の話は多いんです。ビリー・ボブ・ソーントン主演の『スリング・ブレイド』、ケビン・ベーコン主演の『ウィズ・ユー』といった映画があった上に、『ジョン・ジョン・イン・ザ・スカイ』に今さら新しさなんて感じない。不格好な手製の飛行機を作る話なら、『ヴァージン・フライト』がありました。こうした先行作品があることを知りながら、なぜこんな映画を作ってしまったのかがそもそも疑問。たまたま似てしまったのだとしても、先行作品があることはわかっているのだから、少し目先を変える工夫をしないと損です。

 脇役にユニークなキャラクターが多い映画です。こうした点景の人物には、監督自身の体験などがそのまま生かされているのかもしれない。例えばゼオラと一緒に暮らしている黒人の老姉妹は面白いし、電柱工事の男にあこがれる黒人メイドのキャラクターも生き生きしている。(どうでもいいけど、電柱工事の男は「サニー・ボーイ」じゃないのか? 字幕が「ソニー・ボーイ」になってるのは戸田奈津子の趣味だろうか。)孤児たちを引き取って面倒を見ている女性も面白い人物です。戦争に無批判な南部の保守的な牧師というのもリアルだった。

 脇の人物がこんなに魅力的なのに、なぜ中心人物たちはつまらないのだろう。これが映画の致命的な欠点です。父親の人物像なんて、もっと陰影のあるキャラクターになりそうじゃないか。母親との葛藤も、もっと掘り下げて欲しい。でないと父親はひたすら頭が固く、母親は単に浮ついているだけのように見えてしまうよ。

(原題:John John in the sky)


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