プランケット&マクレーン

2000/03/28 東宝第1試写室
主人公たちは18世紀に活躍した実在の強盗コンビ。
監督ジェイク・スコットのデビュー作。by K. Hattori


 ミュージック・クリップの世界で活躍するジェイク・スコットは、リドリー・スコットの息子で、トニー・スコットの甥。名門スコット一家の御曹司である彼の長編映画初監督作がこれだ。ジェイクは数年前、TVシリーズ『ザ・ハンガー』のパイロット版『ハンガー/トリロジー』で、カレン・ブラックとレナ・ハーディが出演する30分の短編作品「三角関係」を演出したことがある。僕はその時プレス資料を作ったり、LDやDVDの解説書を作ったりしていたので、じつはジェイク・スコットとは浅からぬ因縁があるのだ。(僕が勝手にそう思ってるだけだけどね。)『ハンガー/トリロジー』は30分の短編3話からなるオムニバスで、ジェイクの作品は叔父のトニー・スコットやベテラン監督ラッセル・マルケイの作品にはさまれ、ちょっと肩身が狭かった。今回はそこからどれだけ成長しているか、映画を観る前からすごく楽しみにしていたのですが……。

 プランケットとマクレーンは、18世紀半ばのイギリスに実在した強盗コンビ。特にマクレーンは「紳士強盗」として名声を誇り、ジョン・ゲイの「乞食オペラ」のモデルにもなった有名人だそうです。もっとも映画は実録ではなく、実話をかなり大胆に脚色している模様。主演はロバート・カーライルとジョニー・リー・ミラーの『トレインスポッティング』出演者コンビ。マクレーンが惚れ込むマドンナ、レディ・レベッカ役でリヴ・タイラーが出演しています。ひょんな事から強盗稼業に手を染めたプランケットとマクレーンは、金を貯めて新大陸に渡る夢を見ている。次々に強盗を繰り返す彼らの首には多額の懸賞金がかけられるが、同時に、金持ちばかりを狙う彼らは庶民的な人気も獲得していく。

 実在の強盗団を主人公にした映画は西部劇などに多く、この映画はそれのヨーロッパ版を狙っているのだと思う。時代的には西部劇より百年以上前の話だが、男同士の友情があり、女性に対する純情すぎるほどの恋心がある。主人公たちをつけねらう官吏は、西部劇なら保安官か賞金稼ぎという役回りだろう。主人公たちが新大陸に渡ることを夢見ているという設定も、この映画が西部劇の流れの中にあることを証明していると思う。少なくとも脚本の段階では、西部劇を意識していたのでしょう。この映画には大規模な騎馬シーンが登場します。馬車の襲撃シーンがあります。盛大な銃撃戦もあります。ピストルを使った決闘シーンもあれば、賞金首のポスターもあり、広場での吊るし首もある。この脚本は、イギリスで本格的な西部劇を作ろうとしているのです。でも監督のジェイク・スコットは、そうした脚本の本質に気づかなかったのか、気づいても無視してしまったようです。

 この映画は時代考証などのリアリズムと、西部劇風の荒唐無稽な活劇がチグハグです。物語は徹底的に明るいのに、映像は暗くてジメジメしている。音楽にロックを使うという手法も成功していません。せっかくの面白い話を、監督第1作目という気負いが台無しにしています。

(原題:PLUNKETT AND MACLEANE)


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