エリン・ブロコビッチ

2000/04/12 SPE試写室
無学な弁護士助手が史上最高額の和解金を手に入れる。
ジュリア・ロバーツ主演で実話を映画化。by K. Hattori


 ジュリア・ロバーツの新作は、アメリカの大企業から史上最高額の和解金を引き出した実在の女性、エリン・ブロコビッチの人生を描く実録ドラマ。3人の子供を抱えて2度の離婚をし、仕事もお金も社会的信用もなかったエリンが、交通事故の裁判で知り合った弁護士の事務所に潜り込み、何とか食いつなぐことに成功する。そこで彼女に与えられたのは、書類の整理という地味な仕事。ある日彼女は整理していた不動産関連の書類から、巨大企業が有害物質を不法投棄し、それによって周辺住民が深刻な健康被害を受けていることを発見する。住人たちは自分たちの病気と工場の関係に、少しも気づいていなかったのだ。エリンは独自に調査をはじめ、工場と健康被害の因果関係を確信する。彼女は事務所のボスであるエドをたきつけ、大企業相手の訴訟に踏み切る。

 企業相手に実際に起きた民事事件を描いた映画としては、ジョン・トラボルタ主演の『シビル・アクション』が年明けに公開されたばかり。『シビル・アクション』は豪勢な暮らしをしていた弁護士が企業相手の訴訟に首を突っ込み、和解を選ばずあえて裁判に挑んで負け、無一文になってしまうお話だった。ひとりの男の内面的な成長を描いた作品としては見応えがあったが、最後が負け戦ではハッピーエンドとは言い難い。景気よく始まった物語が尻すぼみに終わったような印象も残る。その点『エリン・ブロコビッチ』は無一文の女が徒手空拳の無手勝流で大企業に勝利する話で、映画を観た後の印象がじつに晴れ晴れとしているのだ。

 しかしこの映画を明るいものにしているのは、最後がハッピーエンドだからだけではない。主人公エリンを演じたジュリア・ロバーツの華やかさが、この映画をハリウッド映画らしいきらびやかな作品にしているのだ。話だけを取り出すと、この映画には派手なところがまったくない。手に汗握るアクションシーンはないし、法廷での奇跡の大逆転もない。主人公が行っているのは地味な調査と住民の説得だけ。家に帰れば子育てと隣家の男との友情めいた恋愛が待っている。家にはゴキブリが這い回っているし、相手の男だって汗くさそうなバイク野郎だ。これで主演がジュリア・ロバーツじゃなかったら、たぶんものすごく地味な映画になったと思う。主演のスターがひとりで映画が成り立ってしまう一例です。

 ただし、上映時間2時間11分は少し長い。エレンの悲惨な境遇を示す話が映画の序盤に延々と続き、いつまでたっても本題に入っていかない。序盤のエピソードは組立を工夫することで、もっと圧縮できたと思う。最初の10分ぐらいで彼女の生活ぶりをすっかり見せ、さらに弁護士事務所に潜り込むところまで描いてしまえば、彼女のバイタリティーと転んでもただでは起きない抜け目のなさが強く印象づけられたと思う。やはり映画を観る前に2時間を超えていることがわかると、少し身構えてしまうのです。この内容なら上映時間が2時間を切れるはずだけどね。その点が少し残念です。

(原題:ERIN BROCKOVICH)


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