スチュアート・リトル

2000/05/16 SPE試写室
人間の言葉を喋るネズミが大活躍するファンタジー映画。
子供だまし。大人が観る必要はない。by K. Hattori


 CGのネズミが大活躍する子供向きのファンタジー映画。人間のように言葉を喋り、服を着て日本足で歩き回るネズミをCGで作ってしまった技術はすごいけれど、さんざんCGを見せられている最近の観客は「だからってどこが偉いの?」と思うんじゃないだろうか。原作はアメリカで50年以上に渡って親しまれている児童文学の古典とのことですが、これをわざわざ実写で映画にする必要がどこにあるのかな。確かによくできてはいるけれど、人間の夫婦がネズミを養子にするという話がそもそもわからないし、そのわからない話を雰囲気で誤魔化してしまうような工夫もこの映画はしていない。CGでネズミを作って動かし、「ほらこんなネズミがいるんだから、こんな話だってアリでいいじゃん」と強弁しているだけです。そうじゃないんだよなぁ……。

 同じように動物が人間の言葉を話す映画には『ベイブ』があるけれど、あの映画では美術や構成にものすごく気を配って、「動物が喋る」というファンタジーとリアリズムを結びつける工夫をしていた。ネズミが人間相手に大活躍する『マウス・ハント』でも、舞台となる屋敷のデザインや映像全体のトーンを工夫して、生身の人間の芝居とネズミの芝居がピッタリとマッチするように工夫していた。『スペース・ジャム』では人間たちをワーナーの人気キャラたちと共演させていますが、背景もCGで描くなどして人間の芝居とアニメのキャラクターを近づけようとしています。でも『スチュアート・リトル』にはそうした工夫がまったくない。ネズミは突然人間の言葉を喋り、人間はそれに少しも驚かずに受け入れる。童話の世界ならそれもアリだけれど、実写の映画でそれをやられると違和感がありすぎです。いっそのことミュージカルにでもすりゃあよかったんのに。

 リトル家の一員として孤児院から引き取られたネズミのスチュアートが、本当の家族として受け入れられるまでを描いた冒険たっぷりのドラマ。ヨットレースもあればカーチェイスもあり(それぞれネズミサイズですが)、この映画の世界観に違和感さえ持たなければそれなりに楽しめるかもしれません。主人公スチュアートの声を吹き換えているのはマイケル・J・フォックス。スチュアートを引き取るリトル夫人をジーナ・デイビスが演じ、スチュアートの兄になるジョージ少年を『ザ・エージェント』のジョナサン・リップニッキーが演じている。他にも声の出演として、ネイサン・レイン、『チャッキーの花嫁』でも声優をしていたジェニファー・ティリー、ブルーノ・カービー、チャズ・パルミンテリなどが名前を連ねています。豪華と言えば豪華かもしれない。

 ただ、この映画って夏休みに日比谷映画で上映するような作品なんでしょうか? 一言でいえば子供だましの映画だと思います。大人が大まじめな顔をして観るような映画ではないし、若いカップルがデートで観るような映画でもない。日本語吹替版のビデオが出たら、それを子供に買い与えるようなものだと思いますが……。

(原題:STUART LITTLE)


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