ティガー・ムービー
プーさんの贈りもの

2000/05/17 ブエナビスタ試写室
『くまのプーさん』の人気キャラが総出演の新作劇場映画。
たぶん大人が観ても面白くないと思う。by K. Hattori


 くまのプーさんはディズニー・キャラクターの中ではかなり人気のあるもので、ぬいぐるみなどの関連グッズは膨大な数が出ていると思う。もともとプーさんは“ぬいぐるみのクマ”という設定なので、商品化しやすいというメリットがあるのかもしれない。僕はミルンの原作(2冊ある)を読んでもあまり面白さを感じなかったのでディズニー版も未見ですが、人気があるということだけは知っている。最初に映画が作られたのは1966年だけど、その後も何本か映画が作られており、ビデオも大量に売れているのがその証拠だ。

 今回の映画は、そんなプー人気があればこそ実現した新作映画。人気キャラクターが登場するシリーズものとはいえ、最初の映画化以来の観客が劇場に足を運ぶような映画ではあるまい。これはビデオでプーさんを観ている、小さな子供たちを対象にした作品なのだ。ただし主人公はプーではなく、トラのぬいぐるみのティガー。(僕は岩波の少年文庫で出ている「くまのプーさん」「プー横町にたった家」の読者なので、このキャラの名前は“トラー”なんだけど、そんなことはまぁいい。「ひとまねこざる」が「おさるのジョージ」になってしまったことに比べれば些細なことだ。)彼は自分の家族を捜そうとするのだが、ぬいぐるみの彼にそんなものは最初からいない。仲間たちはティガーのために家族からの手紙を書いたり、トラ柄の着ぐるみを着てティガーの家族を演じたりする。まぁ、そんな話です。

 内容的には子供だましなものだと思います。こんなものをなぜわざわざ劇場で観なければならないのかわからない。最終的には仲間たちが全員集まって「僕たちはみんな家族だよ」というオチになるわけですが、こんな結末はティガーが家族を捜し始めたときからわかりきっている。クリストファー・ロビンの持っているぬいぐるみ以上にはキャラクターが増えない「プーさん」の世界なのだから、ティガーの家族が訪ねてくるはずなどないのです。訪ねてきたらその方が大問題。ティガーの孤独を癒すのは仲間たちの友情しかないのです。この映画はそのわかりきった結論に向けて、1時間以上もぐるぐると同じところを回り続ける。

 「プーさん」が大好きな人なら、劇場の大きなスクリーンで彼らの姿が見られるだけでも大満足でしょう。でもあいにくと僕はそうではないので、観ている間中「こんなものビデオでいいじゃないか」と思っていた。ところが最後の最後になって「これを劇場の大画面で観ずしてどうする!」というような大スペクタクルが登場するのだから、さすがにディズニー、やることにソツがない。もっともこの場面、「プーさん」の世界からは明らかに浮いていると思うけど……。

 プレス資料には「アメリカ映画」と記載されているが、実際には制作作業の半分以上を日本で行った「日米合作映画」です。日本人がディズニーの劇場アニメを作るなんて、なんだか奇妙な感じもするけど……。

(原題:The Tigger Movie)


ホームページ
ホームページへ