オーガズモ

2000/07/24 松竹試写室
「サウスパーク」のトレイ・パーカーが監督したコメディ映画。
期待したほどの面白さはなかった。by K. Hattori


 「サウスパーク」のトレイ・パーカーとマット・ストーンが製作した、ポルノ業界が舞台の異色変身ヒーローもの。ワーナーの英断で『サウスパーク/無修正映画版』が劇場公開されたのを機会に、同じ劇場でこの映画も公開されることになったらしい。下ネタやパロディが満載の映画だが、僕は正直なところ、期待していたほどには面白いと思わなかった。『サウスパーク/無修正映画版』の罰当たりぶりを観てしまった後では、この程度のことが面白いとは思えなくなってしまったのかもしれない。先にこちらを観ていればまた違った感想があるかもしれないけど、こればかりは仕方がない。

 主人公のジョー・ヤングはユタ州出身のモルモン教伝道師。目下のところ彼の悩みは、故郷ユタに残してきた婚約者リサとの結婚資金をどうやって捻出するかだ。偶然訪れた家でポルノ映画の撮影をしていたことから、ジョーは高額のギャラにひかれてポルノ映画に出演することになる。その映画が『オーガズモ』。結婚費用を稼ぐため1作だけにアルバイト出演するはずのジョーだったが、右手に持ったオルガズム光線銃で悪人どもを“昇天”させる正義のヒーローはたちまち映画業界に旋風を巻き起こし、続編が製作されることになってしまう……。

 ポルノ映画業界の内幕を描きつつそれをパロディ化しているわけですが、そもそもポルノ映画業界というのがどうなっているのかよく知らないので、パロディとしての面白さはあまり感じられなかった。アメリカのポルノ映画界についての僕の知識なんて、映画『ブギーナイツ』程度のものです。撮影現場が猛烈に安っぽいのは、ちょっと『エド・ウッド』みたいでもありますけど、どのみちこれだけでは笑えない。映画撮影現場の舞台裏を描いた映画はたくさんあるし、それらに比べてこの『オーガズモ』が特別面白いわけではないと思う。話としては「架空のヒーローが本物になる」という流れがあるのですが、架空のヒーローも本物のヒーローもどちらもチープなので、架空から本物へという変化があまり感じられない。観ていても「どうでもいいよ、勝手にやれば」という気分になってしまった。

 結局この映画、「ものすごく真面目で潔癖性の男が、どういうわけかポルノ映画業界でも最低の男のもとで働くようになってしまう」という部分が面白さの中心。パロディやおちょくりの対象としては、主人公やその恋人の真面目さや潔癖さそのものが笑いの対象になっている。結局のところ、主人公がモルモン教徒だという部分が笑われ、主人公がユタ州出身だということが笑われているのです。個人の宗教や出身地を笑いのタネにするんだからこれはギャグとしてはかなり低レベルのものなんだけど、ファレリー兄弟が『キングピン/ストライクへの道』でアーミッシュを笑いものにしていたのと似たようなものかな。モルモン教について少しでも知っていると、このあたりの差別ネタは面白さ100倍。でも日本じゃこんな映画は絶対に作れないだろうね。

(原題:ORGAZMO)


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