恋するための3つのルール

2000/08/16 映画美学校試写室
恋人の父親はイタリアン・マフィアの上級幹部だった。
ヒュー・グラント主演のラブコメディ。by K. Hattori


 ニューヨークの競売所に勤めるアート・ディーラーのマイケルは、小学校教師のジーナと交際3ヶ月目にして結婚を決意。だがプロポーズした途端、ジーナは「あなたに迷惑をかけるから結婚はできない」と泣き崩れる。彼女の父フランクは、悪名高いマフィア組織グラジオシファミリーの上級幹部だというのだ。坊ちゃん育ちのマイケルがそんな連中と親戚づきあいを始めれば、狡猾な犯罪者たちにいいように食い物にされてしまうに決まっている。だがジーナを心から愛している彼は、リスクを承知で彼女と結婚することを決意。だが婚約が決まった途端、マフィアの手が早速マイケルに伸びてくる……。

 主人公マイケルを演じているのはヒュー・グラント。恋人ジーナを演じているのはジーン・トリプルホーン。その父フランクをベテランのジェームズ・カーンが演じ、組織の親分ヴィトーをバート・ヤングが演じている。カーンは『ゴッド・ファーザー』の出演者だし、ヤングは『アメリカから来た男』でマフィアを演じていた役者。それぞれに過去の出演作を引きずってます。監督のケリー・マキンは、おそらくこの作品で日本初登場になるのだと思う。原題は劇中でマイケルが名乗る偽名だが、これはあまり物語のポイントになっておらず、映画のタイトルとしては精彩を欠いたものだ。しかし代わりに付けられた邦題がこの映画の内容を表しているかというと、それもまったく関係ない。そもそも「3つのルール」なんて、映画の中にちっとも出てこなかったように思う。少なくとも「ミッキー・ブルー・アイズ」という偽名より目立ったものではなかったはずだ。そんなわけで、このタイトルはちょっとばかりインチキです。

 映画にはいろんな職業が登場するが、ギャングやマフィアというのは比較的ポピュラーなもの。でもオークションハウスのアート・ディーラーを主人公にした映画は、かなり珍しいのではないだろうか。少なくとも僕は、過去に同様の作品を観た記憶がない。この映画の中ではオークションハウスの運営や客との駆け引きがうまくギャグにされていて、観ていて楽しめます。このオークションハウスはイギリス系の会社という設定になっていて、主人公もその上司もイギリス人。アメリカ映画の中のイギリス人は、いつだって少し変わったイントネーションで話す、気位の高い連中と相場が決まっている。それがよりにもよってイタリアン・マフィアと深く関わってしまうというのが、いかにもアメリカです。こんな話は、おそらくイギリスが舞台ではあり得ないでしょう。

 マフィア組織には絶対に利用されまいと心に誓いながら、義父の口車に乗せられてまんまと組織の悪事に一枚かむことになってしまう主人公。こんなことが恋人に知られたら一大事。だがここから物語は幾度も意外な展開やどんでん返しを繰り返し、ラストまで軽快に突っ走る。観ているうちにいつも次の一手がある程度読めるのですが、この映画には「あっと驚く驚愕の事実」なんて必要ないのでしょう。そこそこ面白く観られる映画です。

(原題:MICKEY BLUE EYES)


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