博多ムービー
ちんちろまい

2000/08/22 SPE試写室
オール福岡県キャストによる和製ミュージカル映画。
方向としてはマサラ映画を目指したのかな。by K. Hattori


 いや〜、びっくりした。これは『サウスパーク/無修正劇場版』より驚いた。今の日本で、俳優がライブで歌ったり踊ったりするミュージカル映画が観られるとは思いませんでした。ミュージカル映画の完成度という意味では『サウスパーク』に遠く及ばないものの(当たり前だ!)、こんな映画を作ろうとし、実際に作らせてしまった人たちや、出演している人たちは偉いと思う。この映画で非常に残念なのは、映画前半のはじけ具合に比べて、映画の後半がどんどん普通に物語を収束させる方向に進んでいき、最初のはじけた空気がしぼんでしまうこと。ミュージカル映画なんて、もっと無茶なことをやってもいいのに。最後に全員で歌わせればそれですべてが丸く収まってしまうんだから、物語の枠組みをぶち壊すぐらいにしっちゃかめっちゃかに、映画のタイトルを拝借すれば「ちんちろまい」な状態にしてもいい。

 福岡県博多を舞台に、福岡県出身者のオールスターキャストで、博多弁のミュージカル映画を作るというのが、この映画のコンセプト。出演者は超豪華。武田鉄也、牧瀬里穂、床島佳子、後藤理紗、高杢禎彦、小松政夫、高木澪、田口浩正、松重豊、ブライアン・ホルス、ARATA、シンシア・ラスター、千葉真一などがメインで、さらにワンシーンだけのゲスト出演者として、でんでん、舛添要一(御丁寧にも踊りながら自分で「舛添要一です」と名乗る)、光石研、西川峰子、伊佐山ひろ子、中村有志、尾形大作、大川栄策、森口博子(役名は森内、旧姓が森口だという)、財津和夫(本人役)、天本英世(フラメンコを踊る博多弁のコンピュータ)、福岡県知事の麻生渡も本人役で出演している。ケッサクなのは黒田節から名前を付けたという国際派アクションスター、黒田武士を演じている千葉真一。得意のチャンバラやカラテはもちろん、しつこく監督に食い下がる役者バカぶりや、ハリウッド映画や香港映画について実体験から語るくだりなど、まるで本人そのままを思わせます。

 福岡駅前で通りがかりの人たちが踊る場面や、県庁内でスーツ姿の職員たちが歌い踊る場面は、和製ミュージカル映画の傑作『君も出世ができる』を連想させる。特に冒頭の「博多はよかァ」では、列車から降りた武田鉄也が歌い始めると周囲にダンサーたちが集まり、駅前での大群舞、歌い終わるとダンサーたちがそのまま雑踏に散っていくという、まるで『フィッシャー・キング』のグランドセントラル・ステーションみたいな構成。このあたりまでは、ミュージカル映画としてもそこそこイケルのではないかと期待したんだけど……。ミュージカルは歌や踊りの稽古に時間がかかる上、撮影にも膨大な手間がかかるため、これだけのオールスターでまともにミュージカルを作るのは無理なんでしょう。でもダンサーは現地調達だろうから、ダンサーだけ別撮りして最後に編集するとか、工夫次第でもっとなんとかなったかも。映画後半でミュージカルナンバーが激減するのも気になる。ちょっと欲求不満になってしまいました。


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