シャフト

2000/09/29 UIP試写室
サミュエル・L・ジャクソン主演の痛快無比な刑事ドラマ。
オープニングからとびきりの格好よさ。by K. Hattori


 '70年代初頭に作られた『黒いジャガー』シリーズを、サミュエル・L・ジャクソン主演でリメイクしたもの。といっても内容は一新。ジョン・シャフトというキャラクターとテーマ曲だけを借りて、まったく別の映画を作りだしたと考えた方がいいと思う。この映画、最初から最後までメチャメチャにカッコイイ! とにかくスタイリッシュだし、ストーリー展開も歯切れがいい。アクションも見応えがある。主人公が捜査する事件も、「合衆国存亡の危機」とか「新たな世界大戦の火種」といった大げさなものではなく、殺人や麻薬取引というごく卑近な事件であるところが逆に新鮮だったりする。大げさなカーチェイスなし、ビルの爆破なし、大量殺人もサイコがかった殺人鬼も登場しない。それでもこれだけ面白い映画が作れるんです。いや〜、映画っていいなぁ。監督は『ボーイズ’ン・ザ・フット』のジョン・シングルトン。オープニングタイトルにしびれた後は、観客がひとり残らず『シャフト』の世界に一直線。これはいい!

 ニューヨークの高級バーの前で、黒人青年が頭を割られる事件が起きる。凶器は店の前にあった車止めのポール。現場に駆けつけたシャフトは、店員ダイアンの目配せを察して、カウンターで悠然と酒を飲んでいた若い男に目を付ける。手には血糊。男はアッサリと犯行を認め、ニヤニヤ笑いながら正当防衛を主張する。黒人青年はまもなく死亡した。裁判が始まるが、資産家の息子である容疑者は優秀な弁護士を立てて保釈を勝ち取り、あっという間に海外に逃走してしまう。

 物語はこの黒人青年殺人事件と、ドミニカ人の麻薬王の事件が並行し、途中で合流するという構成。最初の殺人事件の話が途中で途切れるものの、麻薬事件捜査の畳みかけるような展開に目を奪われ、ふたつの事件を主人公が行き来することはあまり気にならない。わき役たちの描写は最低限に抑えられ、映画の中心にいるのは常に主人公のシャフト。この男、とにかく腕っ節は強い、正義感にあふれている、そしてガッツがある。警察の中には各方面への気配りや政治的駆け引きを重視したり、犯罪者たちから袖の下をもらって情報を流す輩も少なからずいる。そういう“黒い警官”にとって、シャフトは目の上のコブだ。でも警察署内には、真面目に地域の安全と平和を望む警官の方が圧倒的に多い。得てしてそういう警官たちは署内での地位が低いのだが、彼らにとって筋を曲げないシャフトはヒーローなのだ。

 シャフトが常に中心だからといって、脇の描写がおろそかになっているわけではない。ドミニカ人麻薬王ピープルスのコンプレックス、殺人犯ウォルターの心の傷などもそれとなく描かれる。殺された黒人青年の母親なんて、まったく台詞がないのに存在感たっぷり。このあたりの目配りは、ジョン・シングルトン監督の腕だろう。

 オリジナルの『黒いジャガー』は人気があって続編も作られている。この『シャフト』も、同じスタッフとキャストで続編が観てみたい。しびれました。

(原題:SHAFT)


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