サディスティック&マゾヒスティック

2000/11/22 映画美学校試写室
日活ロマンポルノでSM路線の花形監督だった、
小沼勝監督を追うドキュメンタリー映画。by K. Hattori


 『リング』『リング2』『カオス』の中田秀夫監督が、日活ロマンポルノ助監督時代の師匠・小沼勝監督を追いかけたドキュメンタリー映画。小沼監督は今年『NAGISA(なぎさ)』という少女映画を撮っているが、この作品はあまり面白くない。しかしこの監督が日活で撮った『夢野久作の少女地獄』という作品は、間違いなく大傑作だ。『花と蛇』など日活ロマンポルノのSM路線を作った監督だとも言う。来年1月からこのドキュメンタリー映画の公開にあわせて、『花と蛇』や『少女地獄』を含む小沼監督の代表作12本の特集上映がユーロスペースで行われる。僕は『少女地獄』しか観ていないので、機会があれば他の作品も観ておきたいと思っているのだが、はたして何本観られることか……。とりあえず『少女地獄』だけでも再見しなければ!

 このドキュメンタリー映画は、日活ロマンポルノ末期の小沼作品『箱の中の女/処女いけにえ』の撮影裏話から始まる。語り手はこの作品で助監督をしていた中田秀夫監督本人。中田監督はこの作品の他に、『輪〈りんぶ〉舞』『箱の中の女2』という3本の小沼作品に助監督として付いている。中田監督が日活入社前から憧れていたという、小沼監督独特の映像美と壮絶なラブシーンの世界。日活に入社したからにはぜひ小沼監督の下で働いてみたいと甘い幻想を持っていた中田監督は、実際に小沼監督の助監督をして、それまでの甘い幻想を木っ端微塵に打ち砕かれる。小沼監督の撮影現場がいかに辛く苦しいものであるか、小沼監督の作品に対する思い入れがいかに激しいものであるのかが、この映画では何度も繰り返し語られている。撮影中の小沼監督は、出演者やスタッフに殺意すら抱かせたという。

 映画に登場して証言しているのは、小沼監督と一緒に仕事をしていた女優やスタッフたち。実際の作品から場面をところどころ引用しながら、小沼演出や小沼作品の魅力について生々しい言葉で語って行く。僕はロマンポルノ世代ではないのでまったくわからないのだが、ある世代の人々にとっては、懐かしい顔ぶれが登場しているのかもしれない。ちなみに出演している女優は、小川亜佐美、風祭ゆき、片桐夕子、木築沙絵子、谷ナオミなど。

 中田秀夫監督は『ジョセフ・ロージー:四つの名を持つ男』というドキュメンタリー映画も撮っているが、それに比べるとこの『サディスティック&マゾヒスティック』の方がインタビューの数も多いし切り口も多角的。小沼監督について語っている証言者の話の途中で、別録りされている小沼監督本人の姿を短くインサートするなど、ユーモラスな遊びもあったりする。インタビューを行っている中田監督本人が、インタビューを受けている側と同じ日活という会社にいた人間で、しかも当時は助監督という立場だったこともあり、どこでも「お話をうかがっております」という腰の低さが見えるのも面白い。この作品で小沼勝という監督の全貌が見えるとは思えないけれど、ロマンポルノの入門映画としては最適かも。

2001年1月27日より公開 ユーロスペース
配給:日活 配給協力・宣伝:ビターズ・エンド


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