ナトゥ
踊る!ニンジャ伝説

2000/12/05 ミラノ座
南々見狂也主演のマサラ映画。監督は大森一樹。
脚本と演出にあとひと工夫ほしい。by K. Hattori


 日本テレビ系のバラエティ番組「ウリナリ!!」から生まれた、南々見狂也(南原清隆)主演のインド映画『ナトゥ』の続編。じつは僕、『ナトゥ』は未見。37分の短編映画で、渋谷単館で公開されたのだが、ついに観に行くことができなかった。今回は監督に大森一樹を迎え、1時間40分の長編映画が堂々完成。しかも12月23日から全国公開のお正月映画という、なんだかとてつもない規模にスケールアップしている。

 テレビ番組のレギュラーを何本も抱える売れっ子たちが、その仕事の合間に撮った映画なので、映画の端々から準備不足や突貫撮影の匂いがプンプン漂ってくる。普通の映画ならまだしも、大規模なミュージカルシーンのある映画で、準備期間がたっぷり取れないのは致命的。ダンスシーンは振り付けを覚えるのが精一杯だったのだろうが、総じて身体の動きにキレがない。しかしこの映画には、それを熱意と一所懸命さで乗り切ってしまう勢いがある。決してよくできた映画ではないのだが、目の前に現れた難関を次々突破して行くスリルがある。テレビ番組が仕掛けたイベント・ムービーとしては、これで十分に楽しめるものだと思う。テレビという一方通行のメディアが、映画館や映画というメディアを使って視聴者参加の場を提供するのが、この映画のコンセプトだと思う。映画の内容は二の次三の次。まずは映画を作ること、そしてその映画を観るため観客が集まることが大切。そこにテレビ番組の作り手と、番組視聴者の相互交流が生まれ、それがまた番組にフィードバックされる。

 ただし僕は番組視聴者ではないので、この映画も1本の「映画作品」として観るしかない。そうすると、やっぱりアラが目立ってどうしてもノレないのです。最大の問題は、ダンスシーンの稽古不足以前のところにある。それはミュージカルシーンの間にドラマを挿入して、せっかくのナンバーを分割してしまうこと。映画の冒頭で南々見と天山(天野ひろゆき)が「ミュージカルシーンでは手拍子を」と観客にお願いしていたが、肝心のミュージカルシーンを途中で切ってしまうのだから、拍手する方は置いてけぼりを食ってしまう。例えばパーティーで電源を切ったり入れたりするドタバタなどは、音楽の合間に無言のパントマイムとして演じさせるなどの工夫をすれば、ミュージカルシーンの中断を避けられたはず。その方が気持ちよく手拍子できるだろうに。

 脚本にはインド映画風の大げさなドラマと馬鹿馬鹿しい設定が詰め込まれていて、アイデアとしては悪くないと思う。ただ構成はもっと工夫すべきだった。ナトゥとケディの両親がゲリラに襲われるエピソードは、もっと前倒ししてもいい。ニンジャももっと早く出すべきかもしれない。ヒロインのミーナを演じたネハ・ドゥピアはインドのスーパーモデルだそうだが、あまり画面映えしないのはなぜだろう。クローズアップで突如スローモーションになって髪が風にそよぐとか、お約束のときめきカットがないのが原因かなぁ。これも工夫の余地ありだった。

2000年12月23公開 渋谷東急3他 全国洋画系
配給:日本ヘラルド映画


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