溺れる魚

2001/01/19 東映第1試写室
堤幸彦監督が椎名桔平主演で取った異色刑事ドラマ。
これはカッコイイぞ。僕はすごく気に入った。by K. Hattori


 「最近テレビドラマみたいな映画が多すぎる」という批判を挑発するかのように、あえてテレビと映画の境界を自由自在に動き回って創作活動を行っている堤幸彦監督の最新作。『金田一少年の事件簿/上海人魚伝説』や『新生トイレの花子さん』ではそこそこ面白いエンターテインメント作品を作るにとどまり、『ケイゾク/映画』では逆に映像に凝りまくって「なんじゃこら〜」の世界に行ってしまった堤監督だが、今回の作品は物語の飛び具合と映像のドライブ感が見事にマッチして、エンターテインメントであると同時に映像作品としてのお遊びもたっぷり盛り込まれた傑作に仕上がっていると思う。この軽さは『キッドナッパー』などフランスのアクション・コメディ映画を連想させる。それでいてバタ臭くなく、適度に浪花節。ギャグもわかりやすく、オタク心をくすぐるネタも程良くまぶし、全体がきれいにまとまった、今風の日本映画になっているのは見事。

 踏み込んだ事件現場で銃撃戦が起きたどさくさに紛れ、その場にあった金を着服した捜査一課警部補・白州勝彦。女装癖が高じて、レアものの制服を違法にゲットしてしまった捜査一課巡査・秋吉宗貴。本庁の特別監査官室に呼び出されたふたりは、罪を不問にするかわりにある極秘任務を命じられる。公安部警部・石巻修次の動向を探り、企業との癒着や痛国マフィアとの関係を調べろというのだ。石巻が出入りするクラブに潜入するために、およそ警官らしく見えない白州と秋吉が選ばれたというわけ。やがてふたりはクラブを震源地にした、大規模な企業恐喝事件の存在に気付く。その影にいるのは、クラブ経営者のグラフィックアーティスト岡部哲晃だった。

 登場するキャラクターがどれもかなり突拍子もないマンガチックな設定なのだが、それでいながら「うわ、こんな人いるかも」というリアリティを失わないぎりぎりの境界に立っている。宍戸錠フリークの白州を演じた椎名桔平がなかなかいい。相棒秋吉役の窪塚洋介は僕にとって新顔だったんだけど、これもなかなかいいキャラクターだった。特別監察官室の相川警部を演じたのは『リング0』の仲間由紀恵だが、全編ほとんど無表情で通すのかと思いきや、ファミレスで見せる大食いの凄まじさに絶句。中盤までは声だけの出演になっている渡辺謙。唯一この映画の中で浮いてしまったのは、岡部を演じているIZAMぐらいかもしれない。この役は周囲に心の素顔を見せない役なのだから、SHAZNA時代のようにメイクしていた方がよかったのではないだろうか。

 銀座でのストリーキングから始まり、有明のクラブ、渋谷公会堂前のフリチン無精ひげモーニング娘。など、東京のあちこちでロケした風景がかなり効果的に使われている。圧巻は新宿でロケしたという大銃撃戦。ハリウッド映画とは言いませんが、このノリは香港のエンターテインメント作品ぐらいの勢いがあるぞ。白竜最高。ところで宍戸錠がオムライスにケチャップで書いた文字は、なぜ「開」なんだろうか……。

2001年2月3日公開予定 全国東映系
配給:東映


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