キャスト・アウェイ

2001/02/08 UIP試写室
トム・ハンクス主演の現代版「ロビンソン・クルーソー」。
サバイバルの後に残る人間の孤独。by K. Hattori


 トム・ハンクス主演の現代版「ロビンソン・クルーソー」。国際宅急便会社フェデックスの幹部社員として世界中を飛び回っていたチャック・ノーランドは、乗っていた自社便の遭難事故で絶海の孤島に漂着する。外部との連絡手段はなく、周囲を通る船も飛行機もない完全な孤立状態。生きるために水を確保し、食料を探し、火をおこし、チャックは壮絶なサバイバルを始める。監督は『ホワット・ライズ・ビニース』のロバート・ゼメキス。ハンクスとは『フォレスト・ガンプ/一期一会』の監督・主演コンビの再現ということになる。チャックの恋人ケリーを演じているのは、『ハート・オブ・ウーマン』『ペイ・フォワード/可能の王国』のヘレン・ハント。ただし映画の大部分はチャックのサバイバル生活の描写に費やされているため、彼女の登場シーンは少ない。

 上映時間は2時間24分。長い映画だけれど、その長さはあまり感じられない。これは物語を構成するエピソードに、まったく無駄なところがないからだろう。必要なところに必要最小限のエピソードが配置され、しかもそれぞれのシークエンスが効果的に演出されている。波瀾万丈の冒険物語でありながら、映画の雰囲気は静かで落ち着いたもの。「ロビンソン・クルーソー」がサバイバル生活で“生き抜く”ことをテーマにした冒険活劇だとすれば、この映画がテーマにしているのは、たったひとりで生き抜く孤独にいかにして“堪えるか”だ。映画の中には、無人島の中でいかにして水や食糧を確保するか、火をおこすかというマニュアル的な事柄が多数登場する。これはこれで非常に面白いものだ。ここにはそれこそ、「ロビンソン・クルーソー」的な冒険活劇の趣がある。しかしこの映画が描くのは、生き残るための手段を一通り手に入れてしまった後、なおかつ人間が人間らしく生きるためには何が必要なのかということだろう。

 嵐の中で飛行機が太平洋上に着水し、燃え上がる飛行機から主人公が命からがら脱出するシーンはすごい迫力。僕は昼食直後の上に風邪気味で消化不良ということもあって、食べたものを吐くかと思ってしまった。『乱気流/タービュランス』など航空パニック映画のハイライトシーンに続いて、『タイタニック』の沈没シーンを数分に圧縮した海中シーンがあり、さらに『パーフェクト・ストーム』の嵐の海のシーンがやってくるというこの世の地獄。どっちが上でどちらが下かわからない大混乱に、胃袋がひっくり返るかと思いました。続くサバイバルシーンもよく描けている。主人公がついに火をおこすことに成功するシーンでは、僕も大喜びしてしまった。

 孤独を癒すように、漂着したバレーボールを話し相手にし、恋人に再び逢いたいというただそれだけを念じて生き抜く主人公。しかし無事に生還を果たした彼を、さらなる孤独が待ちかまえているという皮肉。この物語が「現代人の孤独」を描いた寓話だということが、この終盤部分で再び強調されるのだ。映画を観終わった後、深い余韻が残る作品。観て損はないと思う。

(原題:Cast Away)

2001年2月24日公開予定 日本劇場他 全国東宝洋画系
配給:UIP


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