ドラえもん
のび太と翼の勇者たち
(他2本)

2001/03/06 東宝第1試写室
メインの長編より最近は併映の短編の方が面白い。
『がんばれ!ジャイアン!!』に泣かされる。by K. Hattori


 毎年春休みに公開され、観客動員300万人という安定した興行成績を収めている劇場版『ドラえもん』の最新作。今回は長編『のび太と翼の勇者たち』に加えて、短編作品『ドラミ&ドラえもんズ/宇宙〈スペース〉ランド危機イッパツ!』と『がんばれ!ジャイアン!!』の2本を加えた3本立て。総上映時間2時間13分という充実した内容だ。以下、作品ごとに感想など……。

 『ドラミ&ドラえもんズ』は5年前からのレギュラー併映番組で、原作から少し離れて“ドラえもん”というキャラクターを売り出していこうという意図が見える作品。ミッキーやドナルドが物語世界から離れてキャラクターとして存在しているように、ドラミやドラえもんズというキャラクターが存在するわけです。藤子・F・不二雄の世界とはまったく異質なので、原作やテレビアニメのファンには好き嫌いがあると思う。世界観を広げるという意味では面白いと思うけれど、内容的にはドタバタ以外に何もないのがちょっと物足りない。

 『がんばれ!ジャイアン!!』は、『帰ってきたドラえもん』『のび太の結婚前夜』『おばあちゃんの思い出』に続く短編映画。最近の劇場版『ドラえもん』は、メインの長編よりこの短編の方が完成度が高くて評判がいいような気がする。これは原作の完成度が高いということもあるが、それ以上に作り手側が明確に「親の世代」、つまり漫画「ドラえもん」で育った最初の世代をターゲットに想定して作品を作っているからだろう。年齢で言うと30歳代の人々がターゲットなのです。

 『ドラえもん』は20世紀の東京のどこかが舞台なのですが、原作がスタートしたのは昭和44年で、劇中の風景はそこからあまり変化していない。この映画はそんな昭和40年代の風景を、映画の中であえてしっかり再現しようとしている。それが如実に現れるのは、テレビに出演している落語家が林家三平だという部分。時代考証的におかしなところも多いけれど、30代の観客はこういう細かなシーンを見て、自分が子供だった頃の風景を思い出すわけです。映画の主人公はジャイアンとジャイ子の兄妹。今回もうまい具合に泣かせる場面があって、僕も思わずホロリと来てしまいました。映画の最後には大きく成長したジャイ子がほんの少しだけ登場して、僕はこれにも感激してしまった。ジャイ子の成長に、自分自身を重ね合わせてしまうのです。

 メインの長編『のび太と翼の勇者たち』は、正直言って物足りなかった。原作者の藤子・F・不二雄が亡くなってから、藤子流のセンスオブワンダーがなくなってきているんじゃないだろうか。人間界とバードピアの対立を、単純なエコロジーの問題に引き寄せて終わりにしてしまうなんてつまらない。藤子・F・不二雄なら、ここであと少しヒネリを加えたオチを用意しただろうに。それにドラえもんの取り出す道具類が、さらに大きなトラブルを引き起こすという展開が気にくわない。こうして長編が物足りないと、余計に短編が素晴らしく思える。

2001年3月10日公開予定 全国東宝系
配給:東宝


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