縄文式2

2001/04/09 サンプルビデオ
ダーティ工藤が企画・構成・編集・監督したドキュメンタリー。
早乙女宏美のインタビューには笑ってしまった。by K. Hattori


 プロの緊縛師、AV監督、映画監督、映画評論家という多彩な顔を持つダーティ工藤監督が、緊縛について自作自演し解説した異色ドキュメンタリー映画『縄文式』のパート2。前作『縄文式』は“縛る側”であるダーティ工藤監督の写真集撮影を中心にした一人称の映画だったが、今回は女優・早乙女宏美のインタビューなどで“縛られる側”の意見も紹介しながら、「縛る」と「縛られる」という対称的な関係を立体的に描き出していく。

 「縄を解いた後、女の肌に残る縄の跡が美しい」「小一時間もすれば消えてしまう縄の跡にはかない美しさがある」と言うダーティ工藤監督は、ただでさえフェティッシュな緊縛という世界の中でも、ことさらフェティッシュな趣味の持ち主だろう。マニアの中のマニア。このマニアックぶりに、広範囲な支持者や理解者がいるとは思えない。しかし工藤監督は自分の感じる美しさについて、精一杯誠実に語ろうとする。やっていることは相当に変態チックなのだが、語り口は生真面目と言ってもいい。どうすれば縄文式(肌に残った縄の跡を工藤監督はこう呼ぶ)の魅力が伝えられるのか、言葉をひとつひとつ選び、時には同じ言葉を何度も何度も繰り返しながら懇切丁寧に解説しようとする姿には異様な迫力がある。

 おそらくダーティ工藤という人は、「緊縛師」という仕事の中だけで自己表現することに物足りなさを感じているのだ。わかる人はわかるだろうという、職人的な満足感を越えたところで、この人は自己表現の新しい可能性を探ろうとしている。彼にとって緊縛師という仕事は単に収入を得る手段としての“労働”ではなく、自分自身の“生き方”と密接に結びついている。映画の後半でアダルト業界入りのいきさつを語る工藤監督は、そこで今の自分を「幸せだ」と言ってはばからない。これはもう職業人の台詞ではない。芸術家の台詞です。

 全編ビデオ撮りなので、女性の肌に残る縄の跡ぎりぎりにまでカメラが寄っていく。これがすごく効果的になっている部分もあるが、肌色がにじんで縄目が見えにくくなっているシーンもある。光源や照明の角度など、少し工夫する余地があるのかもしれない。

 今回の映画には緊縛だけでなく、女性の身体に刺青を入れるシーンもあって興味深かった。刺青を入れた直後はその部分がミミズ腫れのように盛り上がって、まるで薄手のフェルトを張り付けたような質感になっている。これもビデオでギリギリまで寄ったからこそ見えるものだと思う。刺青の図柄をどうやって肌に写し取るのかなど、見ていて「なるほど」と思う場面もあって面白い。

 ダーティ工藤監督が漫画家・東陽片岡の部屋に潜入してインタビューを行った、『東陽片岡のカク!』が同時上映されるが、これは観ていてちょっと辛かった。部屋に閉じこもってコツコツと机に向かうという仕事のスタイルが、自分にすごく似ているからだと思う。新東宝映画のタイトルを、内容と無関係に何度もタイトルとして挿入するという構成が、ちょっとユニークだった。

2001年5月5日〜5月25日公開予定 中野武蔵野ホール
配給:DK Production
ホームページ:http://www.dk-p.com/


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