g:mt

2001/04/16 東宝東和試写室
高校を卒業後それぞれの進路を模索する若者たちのドラマ。
ちょっと辛すぎるハッピーエンドだなぁ……。by K. Hattori


 タイトルの『g:mt』は劇中に登場するバンドの名前だが、そもそもは“Greenwich Mean Time”を略したものだ。意味は「グリニッジ時」。ロンドン南東部のテムズ川南岸にグリニッジという町があって、そこには世界で最も有名なグリニッジ天文台があった('97年に閉鎖)。この天文台こそが世界地図にある子午線の基準(経度0度)であり、世界標準時もこの天文台を基準に決められている。グリニッジこそが世界の中心。『g:mt』というバンド名には「自分たちこそ世界のど真ん中にいるぞ!」というメッセージが込められているのだ。

 高校を卒業した若者たちが、それぞれの夢を実現しようとする姿を描いた群像劇。製作は監督として『愛と青春の旅立ち』『ホワイトナイツ/白夜』など青春映画の名作を手がけてきたテイラー・ハックフォード。監督のジョン・ストリックランドはテレビ出身で、これが映画デビュー作。高校卒業後、カメラマンを目指しながらバイク便のアルバイトをしているチャーリー。音楽の世界で身を立てようとする、サム、リックス、ビーン。この4人は幼なじみで親友同士。永遠に続くかに思われたこの友情は、チャーリーが交通事故で半身不随の重傷を負ったことをきっかけに大きく揺らぎ解体していく。

 学生時代の友人たちが社会に出てそれぞれ別の道を歩み、関係が変化していくという青春群像劇は今までにもたくさんあったけれど、この映画は登場人物たちが「それぞれ別の道」を見つける前の時間を描いている点が少しユニーク。カメラマン志望のチャーリーは、有名なカメラマンのアシスタントになることが内定した直後に事故に遭い、夢を断たれ、恋人も去り、自分自身の人生を見失ってしまう。バンド仲間たちもマネージャーのサムが目指している音楽性と自分たちが作り出そうとしているサウンドの違いに悩み、私生活上のトラブルなどもあってばらばらになってしまう。学生時代に思い描いていた夢の挫折。その挫折の中から立ち上がって、もう一度別の人生を模索しようとする者もいる。挫折しながらも夢を諦めず、歯を食いしばって夢を追い続ける者もいる。そして挫折から立ち直れず、ついに破滅の道を選ぶ者も。

 ドラマが高校卒業からいきなり4年後に飛ぶのだが、バンドをやっている連中が定職もなくプラプラしているのに対して、カメラマン志望のチャーリーはアルバイトで自活している。このチャーリーというのが、登場人物たちの中では兄貴分のような存在なのだろう。彼の存在が、我の強いバンドのメンバーたちをまとめている面があるのだと思う。だからこそ、彼の事故は周囲に動揺を与えるのだ。映画ではそのあたりの描写が、ちょっと足りないような気もする。登場人物たちの心に大きな位置を占めているであろうチャーリーの存在感が、映画の観客にとってはじつに希薄なものになっているのだ。

 登場人物たちがしばしば映画の台詞を引用するなど、映画ファンにとっては嬉しい演出。最初と最後に『ブレードランナー』の有名な台詞が出てきます。

(原題:greenwich mean time)

2001年初夏公開予定 シャンテ・シネ
配給:東宝東和
ホームページ:http://www.eigafan.com/


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