クイーン・コング

2001/05/21 映画美学校試写室
観る人を虚脱状態にさせる『キング・コング』のパロディ映画。
歌あり、踊りあり、特撮あり……。すごい。 by K. Hattori


 1933年に作られた『キング・コング』は、ハリウッド怪獣映画の古典として今でも多くの人たちに愛されている。その亜流映画は無数に作られており、我が日本の『ゴジラ』やスピルバーグの『ジュラシック・パーク』も、ルーツをたどれば『キング・コング』にぶちあたるのだ。リメイク版は1976年にディノ・デ・ラウレンティスが製作しているが、なんとその同じ年、『クイーン・コング』というパロディ映画がイタリアで作られていた。この映画は『キング・コング』の再映画化権を持つラウレンティスの逆鱗に触れ、映画史の闇から闇へと消えてしまったかに見えた。だが映画製作から25年たって、この映画がなぜか日本で復活する!

 人気映画監督のルース・ハビットは、街で見かけた青年レイ・フェイを主人公に、アフリカで新作映画を作ろうとする。現地で撮影隊を待っていたのは、森の神に生贄の男を捧げる儀式。捕らえられて生贄となったレイの前に、巨大なメスのゴリラ“クイーン・コング”が現れる。コングは撮影隊に捕らえられてロンドンで見せ物になるが、逃げ出して警察や軍隊に追われることに……。オリジナル版『キング・コング』のプロットをなぞりながら、コングを雄から雌に、生贄を女から男へと、男女の関係を入れ替えている。パロディとしてはありがちなアイデアだけれど、この時代はフェミニズムの台頭期なので、このパロディ手法が当時一世を風靡していたウーマンリブに対する皮肉にもなっている。

 全体に非常に安っぽい作りなのだが、若くてきれいな女性たちが、Tシャツやタンクトップ、ホットパンツ、土人風のファッションなど、露出度の高い服装で大勢出てくるし、コングが登場するあたりからはミニチュアあり、合成ありで、それなりに見せ場も作ってくれる。最初から日本語吹き替え版での公開で、主人公レイの声を担当しているのは広川太一郎、ルースの声は小原乃梨子が担当。スカスカな映画を声優のギャグで盛り上げようという、悲しいばかり努力が時にツボにはまることもあって、それなりに笑わせてくれたりする。

 ファッションも音楽も'70年代テイスト満載で、『エクソシスト』や『ジョーズ』など当時の話題作がリアルタイムでパロディにされているあたりは笑ってしまう。現代の感覚からすると、全体の組立やギャグのテンポがずいぶんとゆるいのですが、手に汗握る冒険活劇だった『キング・コング』が、パロディ版でここまでフニャフニャになってしまうというのも笑っちゃいます。

 そんなこんなで映画が中盤に差し掛かり、いよいよクイーン・コングが登場する場面が、この映画の最大のクライマックスでしょう。高まる期待感と緊張にワクワクしながらコングの出現を待っていると、いよいよ現れたその姿に脱力感と疲労感がドッと押し寄せてくる。僕はここでケラケラ笑い、コングと張りぼて恐竜の戦いに顔を引きつらせ、そのままスーッと意識が遠くなってしまいました。まさに失神級の衝撃。これはすごい!

(原題:Queen Kong)

2001年夏公開予定 シネクイント
配給:アルバトロス・フィルム
ホームページ:http://www.movienet.co.jp/QK/


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