いきすだま
〜生霊〜

2001/06/08 東映第1試写室
松尾雄一・光次兄弟(DOGGY BAG)主演のオムニバスホラー。
共演は三輪姉妹。これはちょっと恐かった。by K. Hattori

 人間は肉体と霊魂という2つの要素からできていて、死んだ人の霊魂を「死霊」と呼び、生きている人の霊魂を「生霊(いきりょう・せいれい・いきすだま)」と呼ぶ。生霊はしばしば本人の自覚なしに肉体を抜け出し、恨みを持つ相手にとりついて苦しめ、時には殺してしまうこともあるという。生霊は色恋にからんだ恨み辛みに乗じて出てくることが多いらしい。恋敵を呪い殺すこともあるし、自分を裏切った相手を呪うこともある。生霊は概して女性だ。これはかつての日本で、女性が恋愛の主導権を持てなかったことと関係が深いのだと思う。ヨーロッパでは色恋にからんだ呪いとして妖術や仙術が使われるのだが、それを担ったのも魔女と呼ばれる古代異境の秘術に通じた女性たちだった。しかし「生霊」の怖さは、それが呪術や秘術といった技術なしに、人間の怨念や情念だけで現れてしまうことかもしれない。

 ささやななえこのコミックを映画化した映画『いきすだま〜生霊〜』は、1時間弱のエピソードを2話オムニバス形式にしたホラー映画だ。2つのエピソードに直接の関係はないが、登場人物の一部が重なり合って連作風のドラマになっている。主演はDOGGY BAGというユニットで活動している松尾雄一と松尾光次の兄弟。これに三輪ひとみと三輪明日美の女優姉妹がからんでくる。松尾兄弟は映画の中でも兄弟の役だが、三輪姉妹は第1話に姉のひとみが出演し、第2話に妹の明日美が出演するという構成だ。この映画は「DOGGY BAGの初主演映画」というのが売りで、劇中にはバンドの演奏シーンもあれば、松尾雄一ひとりでギターを弾き語りするシーンなども用意されている。一種のアイドル映画です。でもこれがなかなか恐い。よくできている。監督は池田敏春。

 第1話の「生霊いきすだま」は、松尾光次演じる男子高校生につきまとう女子高生(三輪ひとみ)が、生霊となって彼の部屋を頻々と訪れ、ついには彼の恋人を殺してしまうというお話。三輪ひとみが体温の低そうな薄暗い美少女を好演していて、これはなかなか見応えがあった。本当はセックスにまつわるエピソードをもう少し強く押し出した方が作品の面白さは増したと思うし、『発狂する唇』や『死びとの恋わずらい』の三輪ひとみならそれでもOKだったはずだが、これは松尾光次のファンに遠慮してこの程度の描写になっているのだと思う。でも主人公の男が夢の中では生霊を受け入れ、場合によっては心待ちにしているという描写があった方が、このエピソードは面白いんだけどね。そうすることで、三輪ひとみが彼の気持ちを誤解する部分に説得力が増すだろう。

 第2話「空ほ石の…」はマンションで起きる不思議な現象をテーマにした作品で、第1話では脇役として登場した松尾雄一が、転校生である三輪明日美をあれこれ心配するクラスメイト役で登場する。マンションのベランダに、前の住人が使わなくなった物干しやプランターが置き去りになっていることはよくあること。このエピソードは、そこに目を付けたところがうまい。

2001年6月23日公開予定 新宿東映パラス2
製作:トスカドメイン株式会社、東映ビデオ株式会社
パブリシティー協力:リベロ

ホームページ:http://www.toei-video.co.jp/home/flm/ikisudama.html



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