OVER SUMMER

2001/06/08 GAGA試写室
刑事コンビが張り込み先の部屋で作り出した疑似家族。
アクションシーンも見応えたっぷりだ。by K. Hattori

 一途に仕事にのめり込むマイクと、仕事より女を口説く方が忙しいブライアンは、長くチームを組んでいる息のあった刑事コンビだ。香港で銃を使って多数の死者を出す強盗事件が発生し、ふたりは捜査担当者になる。たれ込み屋からの情報をもとに、犯人ドラゴンたちが訪れそうな武器商人の部屋を監視しようとするふたり。だが張り込みのため借りた部屋の主はかなり痴呆の進んだ老婆で、ふたりの刑事を長く疎遠になっている自分の息子たちだと思いこむ。ふたりはトラブルを避けるため老婆の前ではよき息子を演じようとするが、ブライアンは部屋に女子学生を引っ張り込んでいちゃつき始めるし、マイクはマンションの自治会長に選任されてしまったりと、本来の仕事以外のことが忙しくなってきてしまう。

 真面目一方の堅物刑事マイクを演じているのは、悪役のイメージが強かったフランシス・ン。相棒ブライアンを演じているのはルイス・クー。物語は「凶悪な強盗グループを追う刑事コンビ」という刑事ドラマの定法を守ってはいるが、映画の焦点は犯罪捜査よりむしろ、張り込み先の部屋で生まれる疑似家族関係にある。マイクとブライアンは痴呆症の老婆の息子になり、それぞれに恋人を連れてくる。ブライアンの恋人はナンパした女子学生で、マイクの恋人は近くのクリーニング店で働く若い妊婦。マイクはこの女と何の関わりもないのだが、流産しかけた彼女に付き添いたまたま病院まで出かけた縁で、間もなく母親になろうとするこの若い女の窮状を知り、彼女とお腹の赤ん坊のために何かしてやりたいと考える。縁もゆかりもないこの女に、なぜそこまでしてやりたいと考えるのか? それがこの映画のテーマと深く関わってくる。孤児院育ちで肉親の愛情を知らないマイクは、ある事情があって結婚して自分の子供を作ることもできない。そんな彼が、小さな張り込み部屋の中でささやかな「自分の家族」と「親戚づきあい」を作り出すのだ。

 アクションが主体の映画ではなく、人間同士の交流や絆がテーマになっている作品です。でもこの映画はアクションシーンもなかなかよくできていて、芝居とアクションが巧みに織り込まれたテンポのいい作品になっている。マイクとブライアンによる、コンビニ強盗の逮捕。ドラゴン一味が派手に銃をぶっ放す、映画冒頭の強盗シーン。武器商人の部屋にマイクが忍び込むくだりのサスペンス。ドラゴン一味とマイクたちの邂逅と銃撃戦。どこを取っても水準以上のアクション演出だと思う。

 この映画に登場する人たちは、みんなどこかに欠落した部分を持っている人たちです。マイクが求めていたのは家族だし、ブライアンは本当に愛すべき女性を見いだせない、老婆が失ったのは子供たち、妊婦のユンは頼るべき友人をひとりも持っていなかったし、香港版コギャルのイェンは生きる目標が見えなかった。彼らは短い間小さな家族のような関係を持つことで、それらの問題を解消していく。ちょっと悲しい映画だけれど、これはこれでハッピーエンドと言えるのかもしれません。

(原題:爆裂刑警 BULLETS OVER SUMMER)

2001年7月28日公開予定 キネカ大森
配給:ギャガ・コミュニケーションズKシネマグループ

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/



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