19

2001/06/12 TCC試写室
突然3人組の男たちに拉致された大学生の運命は?
監督・脚本・主演の渡辺一志に注目。by K. Hattori

 三池崇史監督の怪作『ビジターQ』に主演していた渡辺一志が、監督・脚本・主演を兼ねた作品。じつはこの作品の方が『ビジターQ』より先に完成しており、この映画を観た三池監督が大感激して自作への出演を依頼したらしい。『19』に登場する人なつっこくも凶暴な男と、『ビジターQ』に登場する怪人は同じキャラクターなんだそうで……。言われてみれば確かにそうだ。

 バイクを運転中、車に乗った3人組の男たちに声をかけられた19歳の大学生・宇佐見は、突然彼らに拉致され車に押し込まれる。理由は不明。3人組は拉致した相手の名前すら知らないのだ。まるで行き当たりばったり。逃げようとする宇佐見だが、そのたびに殴られたり蹴られたりするため、やがて逃げる気も失せてしまう。運転手をしている男は「俺もあの人たちに連れてこられたんだ」と言うが、今ではまるで逃げる気などないらしい。車を盗んでは乗り捨て、腹が減れば通行人を襲って金を奪い、スーパーで堂々と万引きする3人組と宇佐見。最初は恐怖しか感じていなかった宇佐見だが、少しずつ3人に親しみを感じて逃げる気をなくし始める。

 独特のざらついた映像が印象的だが、これはデジタルカメラで撮影したのではなく、スーパー16で撮影したものをデジタルで後処理して色を抜いたのだという。ここにエレキギターのソロ演奏がBGMとしてかぶさり、映画全体の荒涼とした雰囲気を作り出している。映画の序盤は観ていてかなり不快なもの。何の理由もなく、たまたま通りかかったバイクの青年を暴力的に拉致してしまうという男たちがとにかく不気味だし、この先なにをされるかわからないという不安も感じる。にこやかな談笑が突然鋭い暴力に変化する恐怖。同じような状態に放り込まれたら、宇佐見ならずともすくみ上がってしまうだろう。数人の男たちがひとりの青年を拉致して連れ回すというシチュエーションは、似たような事件を起こしたあげく結局被害者を殺して山中に埋めたという実在の事件を連想させる。この映画も実在の事件にヒントを得たというが、モデルになったのはまた別の事件のようだ。

 拉致される青年を演じた川岡大次郎は他の3人とまったく毛色が違うのだが、これは宇佐見という青年が3人組に第三者的な立場で同行する“目撃者”という役目だからだ。宇佐見が“目撃者”という立場から3人組の“共犯者”になった瞬間、彼らの旅は終わらざるを得ない。3人組は彼らの中で完結した世界を持っていて、そこに他人が入り込む余地はないのだ。それを最後の自動車が象徴的に表している。3人組が宇佐見をメンバーに加えた4人で旅を続けるつもりなら、わざわざ小さな車を盗んだりしない。3人は宇佐見をさんざん魅了したあげく、宇佐見をきっぱりと拒絶する。

 3人組のリーダーを演じているのが、監督でもある渡辺一志。ひげ面の凶暴な男だが、おしゃべり好きで人なつっこく、ニッコリ笑うと白い歯がこぼれて愛嬌がある。役者としてもスケール感を感じさせる、今後の注目株だ。

2001年7月上旬公開予定 テアトル新宿(レイト)
配給:ギャガ・コミュニケーションズ

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/



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