パール・ハーバー

2001/06/21 東京ドーム
飛行機が飛んでいるシーン以外はあまり観るべき場所がない。
ドラマ部分など全部カットしてしまえばいいのに。by K. Hattori

 良くも悪くもこの夏最大の話題作。ジェリー・ブラッカイマー&マイケル・ベイという『アルマゲドン』コンビで、太平洋戦争の幕開けとなった日本軍による真珠湾攻撃を映画化すると聞いたときから、こうなることはすべてわかっていました。それは日頃からある程度映画を観ている人たちならみんな同じだと思う。だから「ドラマはスカスカだが、VFXを使った戦闘シーンは迫力満点!」という結果に、それほど大きな失望を感じる人はいないのではないだろうか。だって予想通りでしょ?

 この映画は時代考証にかなり気を使ったそうだけれど、日本の軍人たちが戦国武将の軍議さながらに屋外で作戦会議をするとか(すぐ横では子供たちがキャーキャー遊んでる)、ふんどし姿の男たちがプールにちゃちな模型を浮かべて作戦会議をするとか、日本人ならずとも「そんなアホな!」と思うようなシーンが多い。真珠湾攻撃に参加したゼロ戦は灰白色だったはずなのに、大戦後期のように濃緑色になっているのも、プラモデルでゼロ戦に親しんでいる世代には許し難いだろう。だいたい真珠湾攻撃の指揮官は山本五十六ではなく、南雲忠一中将だったはずなんですけどね。しかしこうした時代考証のミスや杜撰さを、重箱の隅をつつき回すように指摘するのは野暮というものでしょう。しょせんこの程度です。

 問題は戦闘開始に至る1時間半もの間、だらだらと繰り広げられる愚にもつかないベタベタのラブストーリーにあるのではないか。これがすごく下手くそだから、この映画は馬鹿にされるのです。そもそもキャスティングが弱すぎる。ベン・アフレックや看護婦役のケイト・ベッキンセールはともかく、ジョシュ・ハートネットは今この時点でこの大作映画の主役を張れるだけの役者なのか? アフレックを主役にしたのなら、幼なじみの親友役はマット・デイモンにするのが筋というものでしょう。この映画ではベン・アフレックがヨーロッパ戦線で行方不明になったとたん、映画全体のボルテージががくっと下がってしまう。そしてこのドラマの低調は、二度と同じ盛り上がりに復活できないという意味で致命傷なのです。なぜアフレックが行方不明なの? 彼が生還することは、映画を観ている人なら誰だって最初から知っている。だったらなおさら、残された親友役にはアフレックに匹敵するだけの魅力を持った俳優が必要なんじゃないのかな。ベッキンセール演じる看護婦が、つい惚れてしまうのも無理がないと観客全員に思わせなきゃ。

 評判の戦闘シーンは確かにすごい迫力だけど、主人公たちが飛行機で飛びだしてからは『トップガン』と同じスカイスタント・アクション映画になってしまう。トム・サイズモアが機銃でゼロ戦を撃ち落とすなんて、下手くそな『プライベート・ライアン』です。映画の最後は有名なドゥーリトル隊による日本爆撃。ここで出てくるのは「やられたらやり返せ」「最後は勝て」、そして「日本軍は非戦闘員を機銃掃射で殺したが、アメリカ軍は軍需工場しか爆撃しない」という大嘘。あ〜あ。

(PEARL HARBOR)

2001年7月14日公開予定 全国松竹東急系
配給:ブエナ・ビスタ・ジャパン

ホームページ:http://www.movies.co.jp/pearlharbor/index.html



ホームページ
ホームページへ