ポワゾン

2001/08/02 ムービーテレビジョン試写室
アントニオ・バンデラスとアンジェリーナ・ジョリー主演の恋愛ミステリー。
トリュフォーの『暗くなるまでこの恋を』の再映画化。by K. Hattori

 ウイリアム・アイリッシュのミステリー小説「暗闇へのワルツ」の再映画化。最初にこの小説を映画化したのはトリュフォーだが、ジャン・ポール・ベルモントとカトリーヌ・ドヌーブ主演で完成した映画『暗くなるまでこの恋を』は、トリュフォー作品の中では失敗作に分類されているらしいのだが……。今回の映画は監督・脚本が『ボディ・ショット』のマイケル・クリストファー。主演はアントニオ・バンデラスとアンジェリーナ・ジョリーという顔合わせ。物語の舞台は19世紀後半のキューバに移され、裕福なコーヒー業者の男と、アメリカからやってきた女の愛の相克を描いている。物語の語り手は、暗い刑務所の鉄格子の中で翌朝の死刑執行を待つ若い女。なぜ彼女は死刑判決を受けることになったのか? 彼女はその一部始終を若い神父に語り始める……。

 物語自体はものすごく面白い。謎めいた女の不審な行動。背後に見える男の影。死に神のように付きまとう私立探偵。暴かれる真実。二転三転するストーリー展開。いくつものトリック。裏切り。駆け引き。心理的な罠。しかし僕はこの映画に、いくつか引っかかりを感じてしまった。まず第一に気になったのが、この映画が採った死刑囚の回想形式というアイデアが良かったのかどうかという点。これは最後のオチに関わってくる部分なのだが、僕は最後のオチを不要だと思うのでこのアイデアはあまり買わない。語り手である死刑囚が物語の要所に割って入ることで、かえって物語の流れをせき止めていないだろうか。気になる点の2つ目は、大富豪バーガス氏の前に現れたヒロインが、いきなり自分を「美人」だと自己紹介するところ。ヒロインを演じているアンジェリーナ・ジョリーは魅力的な美女だが、古典的な美女の基準を無条件で満たすような顔の造作をしていない。彼女の魅力はあの大きな目や厚ぼったく大きな唇が作り出す表情の変化の中にあって、無表情なまま能面のように表情をこわばらせていても、思わず見とれてしまうような美女と言えるかどうかは疑問だと思う。

 ある程度人生経験も積み、女道楽もたしなむ男。「愛など不要だ。妻になる女は子供さえ産めればいい」と言い切り、おそらくは実際にそう考えていたであろう男が、花嫁として呼び寄せた若い女に心を奪われ彼女を愛するようになる。何度裏切られても決して代わることのない無償の愛。しかしその愛を裏付けるものが、この映画からはあまり感じられない。バーガス氏はヒロインのどこが好きなのか……。それに対して、ヒロインがいつしかバーガス氏を愛するようになるという展開には無理がなく、素直に納得できてしまうのだ。映画の最後にヒロインが「愛してる」と叫ぶシーンは、思わず涙が出そうになった。それはこの言葉に説得力があるからです。

 ミステリー映画としては常に先の読めない面白さがあるのだが、それをラストシーンですべて台無しにしているような気がする。この物語のすべてが、ヒロインの「虚偽告白」である可能性が生じてしまうからだ。

(原題:Original Sin)

2001年10月公開予定 みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:GAGAコミュニケーションズ 宣伝:ムービーテレビジョン
(上映時間:1時間56分)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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