スウィート・ノベンバー

2001/08/10 よみうりホール
キアヌ・リーブスとシャリーズ・セロン主演のラブ・ストーリー。
映画のテーマと話の筋が合ってません。by K. Hattori

 1968年に製作されたサンデイ・デニスとアンソニー・ニューリー主演のメロドラマ『今宵かぎりの恋』を、キアヌ・リーブスとシャーリーズ・セロン主演でリメイクした作品。オリジナル脚本を書いたハーマン・ラウチャーの名前は原作者としてクレジットされているが、今回はそれを大幅に脚色しているようだ。どこをどう脚色したのか、オリジナル版を観ていない僕にはわかりっこないのだけれど……。監督は『サークル・オブ・フレンズ』『秘密の絆』のパット・オコナー。

 ネルソン・モスはサンフランシスコの広告代理店に勤めるクリエイティブ・ディレクター。数々の賞に輝く彼の実力は折り紙付きだが、日々時間に追われて恋人の相手もしてやれないのが玉に瑕。仕事のストレスで神経をすり減らし、ついにクライアント相手に大げんか。会社を首になり、恋人も部屋を出て行ってしまった。そんな彼の目の前に現れたのは、サラ・ディーバという一風変った女性。「あなたは今問題を抱えているわね。私が助けてあげるから、11月は仕事を忘れて1ヶ月間私と一緒に暮らしなさい」と言うサラ。会ったばかりの見知らぬ女にこんなことを言われても、一夜の関係以上の気持ちは持てないネルソンだったのだが……。

 サラ・ディーバというヒロインが、なぜ初対面に近いネルソンに共同生活の提案をするのか? なぜ彼は「ミスター11月」と呼ばれるのか? じつはサラは毎月ひとりずつ心に問題を抱えた男をみつけ、一緒に生活しては別れるということを繰り返していた。当然ネルソンの前には「ミスター10月」がいたらしい。なぜサラはそんなことをしているのか? こうしてサラが持つ秘密を少しずつ小出しに観客に提供しながら、観客を2時間引っ張っていく映画です。観客が最初から期待するように、主人公ネルソンはサラに本気で恋をするようになり、サラもまたその恋に応えようとする。だが11月限りという期間限定の約束で始まった恋は、やはり11月限りで終わってしまうのだ。「期間限定の恋」というのはつい最近『東京マリーゴールド』でも登場したけれど、あちらは1年、こちらはわずか1ヶ月。

 美しい自分、強い自分、明るく前向きに生きようとしていた自分だけを覚えてほしいと願うヒロインの気持ちはわからなくもないけれど、相手の醜い部分、弱い部分、落ち込んで死にそうな気分になっている相手をまっすぐ見つめていたいと願うのが本当の恋ではないだろうか。恋愛の美味しいところだけをつまみ食いして「いい思い出ができた」と言うだけでは、サラに出会う前のネルソンが女性と付き合っていたのと同じではないか。今この時が楽しければそれでOK。苦しくなったらバイバイ。そんなネルソンの恋愛観が、サラとの関係でどう変っていくかが、これではまったく見えてこない。「富める時も貧しい時も、健やかな時も病める時も、死がふたりを分かつまで」というのが恋愛と結婚のスタンダードだった時代ならいざしらず、現代にこの話は難しいのかも。

(原題:Sweet November)

2001年10月下旬公開予定 丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース
(上映時間:2時間)

ホームページ:http://www.warnerbros.co.jp/

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