怪獣大決戦ヤンガリー

2001/08/22 東映第2試写室
2億年の眠りから覚めた大怪獣ヤンガリーが人間社会を襲う。
韓国から世界に向けて飛び出したケッサク怪獣映画。by K. Hattori

 第二次世界大戦で、兄弟3人を失いながらひとりだけ生き延びたライアン二等兵。彼はアメリカに戻って古生物学者への道を進み、ウェンデル・ヒューズという新しい名前で世界的な学者となっていた。だが同僚のキャンベル教授と共に先史時代の遺跡を探検中、ライアン二等兵……じゃなくて今はヒューズ博士だが……は突然姿を消してしまう。それから2年後。博士の研究成果をすべて横取りしたキャンベル教授が指揮する巨大恐竜化石の発掘現場に、行方不明になっていたライアン……じゃなくてヒューズ博士が再び現れる。発掘現場では作業員の事故死が相次いでいるが、ヒューズ博士はこれを「大怪獣ヤンガリー復活の兆し」だと言う。ヤンガリーの復活を阻止するには、化石を再び地中深くに埋め戻すしかない。しかしキャンベル教授はそれをまったく相手にせず、自らの野心のために発掘を続けるのだが……。

 韓国で製作された本格的な怪獣映画。1999年に製作費12億円をかけて完成した作品だが、その後さらに3億円をかけてCG部分に手を入れ、総製作費15億円のインターナショナル・バージョンとして生まれ変わった。今回日本で公開されるのは、そのインターナショナル版。監督は「韓国のビートたけし」ことシム・ヒョンレ。製作は韓国だが、出演者はほとんどがアメリカ人俳優で、言葉もすべて英語という作品。この映画、かなり怪しいです。怪しさに関しては『プライド/運命の瞬間〈とき〉』や『ムルデカ17805』に匹敵すると言ってもいいでしょう。もっともこの映画の場合は、政治的な胡散臭さの問題ではない。映画製作の成り立ちが、どうもよくわからないのだ。そもそも製作費12億とか15億という話が怪しい。映画の後で宣伝担当者にそれを確認したら、「本当にそれだけかかったみたいです。嘘じゃありません」と言っていたけど、それなら『シュリ』や『JSA』の製作費が2億とか5億で「韓国映画史上空前のスケール」と言っていたのは何なんだ?

 1時間38分の映画だけど、前半はかなりかったるい。冒頭の洞窟探検はともかくとして、その後のヤンガリー復活までがやたらと回りくどいし、行方不明の博士が再登場したりまた姿を消したり、現場作業を首になった助手の女性がまた現場に舞い戻ったり……。いかにも人物の出し入れが無駄な脚本です。僕は映画を観ながら、脳みそがグニャグニャに解けていくような感覚に陥った。しかしヤンガリーが実際に復活してからはテンポがよくなって、ずいぶんとわかりやすい話になる。わかりやすいことと面白いこととは別なんだけど、少なくともわかりにくい映画よりはいい。もちろん「いくらなんでもそんな恐竜はいないだろう」とか、「あの宇宙人は何が目的だったのよ」とかつっこみどころは満載なのだが、そうしたイイカゲンなところも含めて楽しむ余裕がないと、この映画はまったく観るに耐えない駄作でしかないと思う。僕の目には映画版の『ウルトラマンコスモス』も似たようなレベルの映画だけどね。

(原題:YONGGARY)

2001年11月上旬公開予定 新宿東映パラス2他・全国ロードショー
配給:コムストック 宣伝:FREEMAN
(上映時間:1時間38分)

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