コレリ大尉のマンドリン

2001/08/22 ブエナビスタ試写室
第二次大戦下のギリシアでドイツ軍に虐殺されたイタリア兵の悲劇を、
島の娘とのロマンスをからめて描いた文芸大作。by K. Hattori

 第二次大戦中に中立を守ろうとしたギリシアは、ドイツ軍の猛攻を跳ね返すことができないまま降伏。国土はドイツとイタリアに分割統治されることになる。'41年、美しい海に囲まれたケファロニア島にも、イタリア軍の兵士たちがやってくる。島の人々はこの占領軍を忌々しい思いで眺めていたが、陽気で気さくなイタリア兵たちの振る舞いに少しずつ心を開いていく。'43年夏、イタリアは連合軍に降伏し、島に駐留していたイタリア兵たちも故郷に帰ることになった。だが武装解除を巡るトラブルから、イタリア・ドイツ両軍の間に戦闘状態が生じる。数日の戦闘の後、イタリア軍はドイツ側に屈したが、ドイツ軍は投降したイタリア兵を片っ端から銃殺。島に駐留していたイタリア兵9千人は、わずか34名を残して全滅してしまったという。この映画はそんな史実をもとに、音楽好きで陽気なイタリア人大尉と島の美しい娘の悲恋を描いたラブストーリー。監督は『恋におちたシェイクスピア』のジョン・マッデン。主人公コレリ大尉を演じるのはニコラス・ケイジ。島の娘ペラギアを演じるのはペネロペ・クルス。ペラギアの父を名優ジョン・ハートが演じ、狂言回しの役割をする。

 物語の筋立ては、インドネシアで独立戦争を戦った日本軍兵士たちを描く映画『ムルデカ17805』に一脈通じるものがあると思った。敵兵として美しい島を占領しながら人間的な魅力を振りまいて島の人々に愛され、自分たちの戦争が終わって故郷に帰れるというのに、あえてドイツ軍と戦って散っていく兵士たち。しかし『ムルデカ17805』には存在せず、『コレリ大尉のマンドリン』に存在しているものがある。もちろん主人公と現地の娘とのロマンスも大きな要素だが、それ以上にふたつの映画を隔てているのは、占領軍の兵士が島の人々に持っている「占領軍としての負い目」だろう。ギリシアの人々にとって、イタリア人は祖国を奪った敵なのです。主人公のコレリ大尉は、自分たちの存在が島の人々から面白く思われていないことを知っている。美しいペラギアの婚約者は、祖国を守るためレジスタンスに身を投じているではないか。島の人々はそうした若者たちの愛国心を、心の底から誇りに思っている。イタリア兵たちの陽気さは軽薄さとして島民の目に映り、ひどく軽蔑されてさえいる。そうした島民の心情をすべて理解した上に、このコレリ大尉とペラギアの恋があるのです。これに比べると、『ムルデカ17805』はなんと無神経で独りよがりな映画だろうか。

 物語にはギリシア人、イタリア人、ドイツ人が出てくるが、ギリシア人は正教、イタリア人はカトリック、ドイツ人は大半がプロテスタントだから、それぞれの文化的な気質もまったく違う。ヨーロッパの3つの文明が、この島でぶつかり合うわけです。少々言葉足らずでわかりにくいところもあるけれど、戦争の愚かしさと悲劇を風格あるドラマの中に封じ込めた作品だ。ヒロインの婚約者を演じたクリスチャン・ベールもよかった。

(原題:CAPTAIN CORELLI'S MANDOLIN)

2001年9月22日公開予定 丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系
配給:ブエナビスタインターナショナル(ジャパン)
(上映時間:2時間9分)

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