ヘヴィメタル FAKK2

2001/09/05 シネカノン試写室
アメリカのコミック誌「HEAVY METAL」の世界を映像化。
暴力描写がかなり露骨だったりする。by K. Hattori

 アメリカの人気グラフィック・ノベル誌「HEAVY METAL」の世界を映像化したアニメーション映画。同じコンセプトで20年前にもオムニバスアニメ映画『ヘビー・メタル』という映画が作られているが、今回の映画はその続編というわけではなく、オリジナルの長編アニメになっている。かつて宇宙全体を恐怖と暴力で支配したアラケシアンという種族は、そのパワーの源をユロボリス星の「闇の間」に封印し、鍵を遠い宇宙の果てに隠した。だが偶然これを発見したタイラーという男は、鍵に封じ込まれた呪いの力で邪悪な人格に変貌し、一路「闇の間」を目指して宇宙を突き進む。タイラーはその途中で「命の水」を手に入れようと植民星エデンに立ち寄り、平和に暮らす住人たちを片っ端から大虐殺。この惨劇をただひとり生き延びた女戦士ジュリーは、家族や友人たちを殺したタイラーへの復讐を誓う。

 筋骨隆々の女戦士が重火器で武装して大暴れするというお話は、可憐なヒロインが多い日本のアニメやコミックスの世界では考えられないもの。欧米人はこういうゴツくて猛々しい女を「セクシー!」と考える要素があるようで、このへんの感覚が僕にはちょっとわからない。寝込みを襲って敵将の首を切り落としたユディトあたりが、こうした猛烈女のルーツなのかもしれない。そうだとすればもう2千年に渡って、こうした女性像が欧米人の心に刷り込まれていることになる。

 この作品はインディーズのアニメ映画で、予算的にもかなりタイトな中で制作が行われているようだ。上映時間は1時間27分だが、その中にいろいろな要素を詰め込みすぎ。まるでテレビ・ミニシリーズのダイジェスト版を見ているような気分だった。あと10分か20分あれば、もう少しゆったりした構成になるのだろうが、そうできないのがインディーズの辛さ。CGがかなり使われているのだが、それも似たような場面である時はCGを使い、ある時はCGを使わないというチグハグさがあり、絵作りという点ではばらつきが目立ってしまう。ディズニー映画や日本のアニメ映画のような緻密な世界に慣れている目から見ると、ずいぶんと荒っぽいのだ。

 しかしこの映画の魅力は、そんな荒っぽさを越えたキャラクターの面白さなのだ。鍵に触れたことで人格を一変させたタイラーの狂気と、一族を皆殺しにした彼を執拗に追いつめていくジュリーの対決。一方は徹底的に悪の道に突き進み、一方はそれを討ち滅ぼすために前に進む。悪を滅ぼそうとするのが「善」とは限らない。劇薬が別の劇薬で中和されるように、ジュリーの性格もタイラーと同じくらい乱暴なのだ。その暴力が、手当たり次第に周囲に振りまかれないだけ。でも彼女のタイラー襲撃の巻き添えを食って死んだ人は、やっぱり浮かばれないと思うけどなぁ……。機銃掃射で人間のはらわたが飛び出すとか、棍棒で殴られて目玉が飛び出すなど、劇中にはかなりグロテスクな描写もあるが、これが結局は「HEAVY METAL」の流儀なのでしょう。

(原題:Heavy Metal: F.A.K.K. 2)

2001年11月公開予定 俳優座トーキーナイト(レイト)
配給:メディア・スーツ 提供:スパイク
(上映時間:1時間27分)

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