リーベンクイズ
日本鬼子
日中15年戦争・元皇軍兵士の告白

2001/10/02 映画美学校第2試写室
日中戦争に参加した元日本兵たちが自分たちの行った罪を告白。
歴史の表舞台では語られない戦争の残虐な実態。by K. Hattori

 本当か嘘かは知らないが、以前どこかで読んだか聞いたかして「なるほど」と腑に落ちた話がある。軍隊などで銃殺刑を行う場合、数人の兵士が横一線に並んで標的となる人間を射殺するのだが、このとき兵士たちの持つ銃のひとつは空砲が込められていて実弾は発射されないのだという。あるいは刑務所内部で死刑囚を処刑する時、処刑装置のスイッチは同じものが2個用意されていて、2人の刑務官が両方のスイッチを同時に入れることで装置が作動する。この時も片方の装置はダミーになっているのだという。なぜこんな面倒なことをするのか? それは死刑執行に関わった人間の誰もが、「少なくとも俺の銃は空砲だったに違いない」「きっと自分の押したスイッチはダミーだった」と考えることで、人間が人間を殺すことによって生じる心理的なストレスを回避できるからだという。相手がどんな罪を犯した人間であれ、たとえ正規の裁判を経た結果であれ、人間は他人の命を奪いたくはないのだ。これは軍隊でも同じ。兵士にとって敵兵から殺されるかもしれないという恐怖と同じぐらい、敵兵を殺すことも心理的なストレスになる。殺されるのも恐いが、殺すことも同じぐらい恐い。

 1931年9月の柳条湖事件に端を発する満州事変から1945年8月の敗戦まで、足掛け15年に渡る日中戦争では、日本軍による数々の蛮行が行われた。この映画はその実態を、生き残った元日本兵たちの証言によって綴ったドキュメンタリー映画だ。中国での日本軍の蛮行としてしばしば引き合いに出される事件には、いわゆる南京大虐殺事件がある。しかしこの映画は、日本軍の組織的な兵民虐殺がいかに日常的に行われていたかを淡々と綴っていく。南京大虐殺も、そうした数多くの虐殺の一風景に過ぎない。日本軍は行く先々で人々から食料や家財を奪い、家屋に火を放ち、女性を犯し、男はもちろんのこと老人や女子供まで容赦なく殺戮していく。こうした行為はすべて違法な行為であり、重大な軍規違反だ。正式にそれが告発されれば、兵士たちは軍法会議にかけられて厳重に処罰されるのが決まり。しかしどの部隊でもこうした行為は黙認され、犯罪が外部に漏れることはなかったという。軍隊は巨大な役所組織。役所が身内の不祥事を隠すのは、昔も今も変わらない。

 人間は人を殺すことに恐怖を感じる。それは60年前の日本人だって同じだ。そこで中国戦線の日本軍兵士たちの中では、新兵に人を殺す恐怖を克服させるため、捕虜の処刑が日常的に命じられていたという。「度胸試し」と称して、新兵に生きた捕虜を銃剣で刺させたり、軍刀で首をはねさせたりする。こうした“新兵教育”の結果、中国大陸の日本兵は中国人を殺しても何とも思わない殺人マシーンになっていった。この映画の中では数々の残虐行為が証言されていて、中にはにわかに信じがたいような話も多い。でもそれを語っているのは中国の古老ではなく、ごく普通の日本の老人なのだ。話半分だとしても、これはかなり大変なことだと思う。

2001年12月初旬公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給・宣伝:「日本鬼子」製作委員会 
配給・宣伝協力・問い合せ:イメージフォーラム

(上映時間:2時間40分)

ホームページ:http://www.japanesedevils.com/

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