ジェヴォーダンの獣

2001/11/07 GAGA試写室
18世紀のフランスを震撼させた猟奇事件を完全映画化。
ミステリーあり、アクションあり、ロマンスあり。by K. Hattori

 『ルイ15世の治世末年の1764年より68年にかけて,ジェボーダンの山間の放牧地で,牛飼いの女や羊の番をする若い娘が,恐ろしい形相の怪獣に襲われ食い殺されるという事件が続発した。それは半ばハイエナに,半ばライオンに似ると伝えられ,牛や羊の放牧のため人里離れた高地にとどまらざるをえない土地の人びとを大恐慌に陥れた。人びとは,狼男の出現を噂し,妖術使いの介入を疑った。マンドの司教は,これこそまさに神のたたりなりとして,悔い改めよとの布告を発する。このニュースは,かわら版や民衆向けの青表紙本で虚実とりまぜて伝えられ,〈ジェボーダンの怪獣〉の名は,オランダやドイツにまで広まった。』(DVD-ROM世界大百科事典・年鑑・便覧より)

 18世紀のフランスで一大恐慌を引き起こした怪事件を、史実に沿って映画化したコスチュームプレイ。主人公はこの事件を調査するため、王室から派遣された博物学者グレゴワール・フロンサック。怪物の正体は現在も謎とされているが、この映画は歴史に隠された“真実”に結論を出そうとする(一応は)本格的な歴史ミステリーだ。だが大まじめな歴史ドラマというわけではない。物語にはフロンサックと地元名家の娘や美しいイタリア人娼婦とのロマンスがからみ、フロンサックが連れてきたアメリカインディアンの青年マニの派手なアクションシーンが盛り込まれる。歴史ロマン、猟奇犯罪ミステリー、ラブロマンス、カンフーアクション、チャンバラ活劇など、映画の面白さがぎっしり詰め込まれた2時間18分の娯楽巨編なのだ。とにかく近年まれな面白さ。フランスで『クリムゾン・リバー』を超える記録的ヒットになったというのもうなずける完成度だ。

 監督は5年前に偽ハリウッド映画『クライング・フリーマン』を撮ったきり音沙汰なしだったクリストフ・ガンズ。主人公フロンサックを演じるのは『エステサロン/ヴィーナス・ビューティー』のサミュエル・ル・ビアン。地元の貴族ジャン=フランソワを演じるのはヴァンサン・カッセル。主人公の恋人マリアンヌに『ロゼッタ』のエミリエ・デュケンヌ。謎めいたイタリア人娼婦シルヴィアを演じるのは、イタリアの至宝モニカ・ベルッチ。主人公のガイド役となる地元の若い貴族トマ・タブシェを演じるのは『クリミナル・ラヴァース』のジェレミー・レニエ。そして主人公の義弟マニに扮するのは『クライング・フリーマン』のマーク・ダカスコ。

 映画の冒頭はいきなり『ジョーズ』の導入部と同じ演出になっていて、この監督の娯楽映画指向を如実に感じさせる。前半はわりとオーソドックスに格調高い歴史ドラマ風の絵作りや演出をしているのだが、主人公たちが獣狩りのために再びジェヴォーダン地方を訪れたあたりからエンジン全開。特にラスト30分ほどの展開は、めくるめく夢のようなアクションの洪水。しかもそれがいちいちカッコイイ。中でもモニカ・ベルッチが最高。動きは少ないけど決まってる。これが演出ってもんだ!

(原題:LE PACTE DES LOUPS)

2002年陽春より公開予定 ニュー東宝シネマ他・全国東宝洋画系
配給:GAGA、ヒューマックス 協力:日活

(上映時間:2時間18分)

ホームページ:http://www.france-no1.com/

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ