ハリー・ポッターと賢者の石

2001/11/13 丸の内ピカデリー
大ベストセラー・シリーズの1作目をクリス・コロンバスが映画化。
原作に驚くほど忠実。原作読者もご安心を。by K. Hattori

 大ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズ第1作目の映画化。既に本作と同一スタッフ&キャストでの続編製作が決まっているが、おそらく大ヒット間違いなしの本作公開直後には3作目以降の製作も決定すると思われる。原作は全部で7部作になるそうだが、1年1作ペースの執筆で完結はまだ数年後。結末がどうなるかは作者にしかわからない。1作目から随所に後への伏線が張ってあるため、映画化にあたっては勝手に細部をアレンジすることができない。原作者との約束があろうとなかろうと、今後この映画をシリーズ化しようとする限り、原作からの大きな逸脱は不可能なのだ。当初この映画の監督には多くの監督の名が上がっては消えていったが(その中にはスピルバーグの名もあった)、最終的には『ホーム・アローン』シリーズのクリス・コロンバスが1,2作目の監督に決定した。3作目はまだ未定だが、スピルバーグが食指を動かしているとかいないとか……。

 必要があって原作を読んでからの鑑賞となったが、これは原作の読者にもきちんと満足してもらえる映画になっていると思う。原作を超えたとか、原作以下とか、そういう比較をしても仕方がない。この映画は最初から、原作を超えようなんて色気を少しも出していない。この映画は原作を忠実に映像化した、動く挿絵、現代版の絵巻物なのだ。原作の主なエピソードは残さず映像化されているし、原作に登場する人物たちもほとんど原作通りの姿で登場する。原作を読んで面白いと思ったシーンで、映画で省かれてしまった場面はほとんどないと思う。長大な原作をほとんど省略なしに映像化しているのだから、これで2時間半強に収まっているのはむしろ素晴らしくコンパクトな映画と言えるかもしれない。

 映画で感心させられるのは、原作の中ではどうしても文字で語り尽くせないビジュアル面のディテールを、映画がきちんと埋めていること。これだけでも、原作のファンは大喜びするだろう。今まで頭の中でもやもやと想像するしかなかったホグワーツ魔法魔術学校の様子が、見事に映像化されている。もちろん個々のキャラクターについては「違う!」という意見があるかもしれないが、今後はこの映画版『ハリー・ポッター』が、これから原作を読む人のイメージを形作る手助けになるだろう。活字の方が映像よりも饒舌な時がある。しかし映像でしか語れないドラマもあるのだ。例えばこの映画の中に登場するクィディッチの試合の様子など、活字では絶対にこれだけの迫力は得られないと思う。

 原作を本当に忠実に映画化しているので、まだ原作を読んでいない人はこの映画の後に、シリーズ2作目「ハリー・ポッターと秘密の部屋」を読んでも大丈夫だろう。僕自身は映画の予告を観た後で原作を読んだのだが、キャスティングではハーマイオニーのイメージがちょっと原作と違うような気がする。映画のハーマイオニーは可愛すぎて、生真面目な秀才タイプで成績を鼻にかけるような嫌味っぽさが見えてこないかも。

(原題:HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONE)

2001年12月1日公開予定 丸の内ピカデリー他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画

(上映時間:2時間32分)

ホームページ:http://harrypotter.jp.warnerbros.com/

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