ファイナル・ロマンス
天若有情III

2001/12/04 シネカノン試写室
香港から来た若い男女が日本のスキー場で恋に落ちる。
エディソン・チャンはともかくヒロインが弱すぎ。by K. Hattori

 『ジェネックス・コップ2』のエディソン・チャンが主演した、ちょっと古風なラブストーリー。お金持ちのお嬢様と、貧しい整備工の間に生まれた恋。じつはふたりの兄と姉も、かつて愛し合った恋人同士だった。ふたりはそれぞれの兄姉が出会い、愛し合った場所で出会い、兄姉と同じように激しい恋に落ちる。だが香港に戻れば、ヒロインには将来有望な若い医者という婚約者がいる。父親は姉が男性と付き合うのにも反対だったが、ヒロインがその弟と交際しているとなれば再び反対するに決まっている。周囲は主人公たちの恋を「身分違いの恋」だと決めつけ、一度はふたりの仲を裂こうとするのだが、やがて当事者同士の真剣な気持ちに胸を打たれて応援するようになる……。こんなベタベタのラブストーリーを、ここ20年ぐらい見たことがない。大昔の少女漫画みたい。正直言って、このお話はどうしようもなく陳腐だ。

 しかしこの映画、その陳腐さを補うだけの魅力を持っている。それは主人公ディクを演じたエディソン・チャンの溌剌とした魅力であり、その兄弟分とも言える大親友セナを演じるサム・リーの面白さ。このふたりは『ジェネックス・コップ2』でも共演していたが、ふたりのからみという意味では今回の方がずっと濃厚だ。ヒロインの付き添いでいつも行動を共にする親友フェイというキャラクターはありがちなものだが、これも演じているシンディ・オウの魅力で生き生きした人物になっている。ディクとセナの兄貴分を演じるテレンス・インの格好良さは、少ない登場シーンながら強い印象を残し、日本の旅館に婿養子に入った香港青年という設定のチューヤンもなかなかいい味を出している。ヒロインの父を演じたサイモン・ヤムも渋い。

 陳腐な物語を役者の魅力だけで見せるこの映画において、大きなマイナスポイントになっているのはヒロインのジーンを演じたアマンダ・ストラングだろう。モデル出身だけあって確かに美人だけれど、演技が小さく表情も硬い。「子供の頃から心臓が弱い」という設定だから、まぁこういうのもアリだと製作者側は考えたのかもしれない。ジーンは絵に描いたような深窓の令嬢です。青白い顔に表情が乏しいのも、口数が少なくてあまり感情を表に出さないのも、幼い頃から父親と姉の庇護のもとで物質的には何不自由なく、それでいながら精神的にはがんじがらめになって育ってきたからなのでしょう。(それならスキー場でびゅんびゅんスキーを楽しんでいたのは何なんでしょう。ここは陳腐な物語に徹して、友人や仲間たちがスキーを楽しむ間も、ひとり部屋に閉じこもっているような設定にしないと整合性が取れないと思うけどなぁ。)彼女はディクと知り合い愛し合うようになって、少しずつだが若い女性らしい明るい表情を取り戻していく……はずなんだけど、残念ながらアマンダ嬢の表情は最後まで硬い。これはやはり減点対象だ。

 それにしても、香港映画は日本でロケするのが好きだなぁ。サム・リーも片言日本語ギャグを連発している。

(原題:願望樹 Final Romance)

2002年1月公開予定 キネカ大森
配給:メディアスーツ

(上映時間:1時間37分)

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