ジーパーズ・クリーパーズ

2001/12/04 メディアボックス試写室
設定は安っぽい青春ホラーだが、これがすごく面白い。
キャラクターが強烈なのでシリーズ化できそうだ。by K. Hattori

 仲良し姉弟のトリッシュとダリーが、おんぼろ自動車で帰省の旅。周囲は見渡す限り何もない田舎道で、行き交う車もほとんどない。そんな中で突然現れたボロボロのトラックが姉弟の車に追突しかねない勢いで急接近し、けたたましくクラクションを鳴らす。のどかな空気は一変し、姉弟はパニックに。やがて姉弟はこのトラックに乗る男が、荷台から死体らしきものを降ろしている場面を目撃してしまう。警察に通報しようにも携帯電話はバッテリー切れ。まずは自分たちの目で何が起きているのかを確認するしかない。ダリーは死体らしきものが投げ込まれたパイプを伝って、古い教会の地下室に降りていく。彼がそこで見たものは、バラバラに解体され、継ぎ合わされた死体の山だった……。

 製作総指揮がフランシス・コッポラ。アメリカン・ゾエトロープが製作したサスペンス・ホラー映画だ。監督・脚本は『パウダー』のヴィクター・サルヴァ。主演はジーナ・フィリップスとジャスティン・ロング。中身は『激突!』『ロード・キラー』などと同系統の「大型トラックに襲われる恐怖」に、『ブレーキ・ダウン』『悪魔のいけにえ』系統の「アメリカの田舎町では人知れずとんでもない犯罪が起きている」という設定を付け加え、さらに『ハロウィン』『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』系の青春ホラーの要素と、霊能者が登場するオカルト映画の面白さが加味されている。かなり欲張った内容だが、これで上映時間は1時間半。内容は盛沢山でも、物語の構成はシンプル、展開はスピーディー。無名キャストの青春ホラーという定番ジャンルの作品だが、作り手の才能を十分に感じさせる映画になっている。

 この映画は前半と後半で面白さの質がまったく違う、いわば二階建ての構造になっている。1階部分は『激突!』や『ブレーキ・ダウン』『悪魔のいけにえ』などを連想させる、サイコサスペンス系のホラー映画。ところがそこから2階に上がると、猟奇殺人の犯人と思われていたものが実は……という展開になってしまう。正直言って、僕はこの段階で恐怖が消えてしまった。相手が普通の人間なら「どこかに逃げるチャンスがあるかもしれない」という希望がある。一片の希望がある限り、人は生に執着し、死から逃れようともがき抜く。生への希望があるからこそ、人は死を恐怖するのだ。希望が一切なくなって残るのが死だけなら、人間がいくらじたばたしたところで仕方がないではないか。

 普通に考えれば、この映画の面白さは前半にあるし、前半で作られた姉弟のキャラクターが魅力的だから、そのまま後半も見られるのだと思う。特に会話の生き生きとしたテンポは素晴らしい。しかし僕は、この映画の後半に出てくるあの殺人鬼も面白いと思った。デジタル技術を駆使した新世代のモンスターとして、魅力的なルックスを持っているのだ。このモンスターだけで、まだまだ同系統の映画が作れる余地がある。この映画はぜひともシリーズ化してほしい。たぶんするだろうけど……。

(原題:JEEPERS CREEPERS)

2002年陽春公開予定 全国松竹東急系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給 宣伝:オメガ・エンタテインメント

(上映時間:1時間30分)

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