プリティ・プリンセス

2001/12/14 ブエナビスタ試写室
平凡な女子高生がじつはヨーロッパのお姫様だった!
ジュリー・アンドリュース演じる女王様が絶品。by K. Hattori

 誰もが子供の頃に一度は考える馬鹿げた妄想のひとつに、「自分は本当はこの家の子供ではなく、どこかの大金持ちの子供なのだ」というものがある。欧米だとこの妄想がさらに膨らんで、「自分はどこかの王族か貴族の血を引く特別な人間なのだ」ということになる。これは子供だから許される馬鹿馬鹿しい妄想であって、この妄想を大人になっても持ち続けるのはちょっとイカレているとは思う。もっとも日本人の多くは、自分の家系をたどると源氏か平氏にたどり着くと信じている。源平はさらに祖先をさかのぼると天皇家につながるから、要するに日本人のほとんどは天皇家の子孫というわけだ。これが子供の馬鹿げた幻想ではなく、大のおとなが「うちの先祖はだなぁ」と大まじめに論じてしまうのは滑稽だと思う。でもこういう幻想が、戦前の家父長制的天皇制を支える基盤になっていたんでしょうね。天皇家は日本国の本家であり、日本人はすべてその分家であるという思想。まぁ中には、正真正銘の源氏や平氏の末裔という方々もいるんでしょうけれど……。でもたいがいのものは眉唾だと思うよ。ちなみに僕のうちは母方が源氏の末裔らしい。まぁ、99.99%インチキだろうけどね。

 この映画は平凡な……というより、明らかに平凡以下の目立たない女子高生が、じつは由緒正しいヨーロッパの王族の一員、しかも将来は国の統治者となることを約束されたプリンセスだったという、絵に描いたようなシンデレラ物語。シンデレラは王妃になるだけだが、この映画の主人公は女王になってしまうのだからそれ以上だ。監督は『プリティ・ウーマン』『プリティ・ブライド』のゲーリー・マーシャル。映画会社はこれを『プリティ』シリーズ第3弾などと言っているが、もちろん前2作と特に関連があるわけではない。監督が同じというだけのこじつけだ。しかし平凡以下の生活をしていたヒロインが、たっぷりお金をかけてレディに大変身するという展開は『プリティ・ウーマン』に似ているし、主演のアン・ハサウェイは口が大きくて、表情が大げさなところがジュリア・ロバーツに似ているかもしれない。

 『プリティ・ウーマン』は現代版の『マイ・フェア・レディ』と言われたが、本作『プリティ・プリンセス』もそれは同じだ。作り手側もそれは当然意識している。本作でヒギンズ教授の役回りを演じるのは、ブロードウェイのオリジナル版「マイ・フェア・レディ」でイライザを演じたジュリー・アンドリュース。彼女の経歴を含めてこの映画を観ると、クラリス女王が「私も初めての晩餐会では大失敗して……」と語る場面で、「マイ・フェア・レディ」の花売り娘イライザと、本作のヒロインであるミアの境遇が重なって見えてくる。

 「平凡な女子高生がじつはプリンセスだった!」という奇想天外な話なのに、映画は終盤になって物語を小さなところでまとめてしまった。マーシャル作品常連のヘクター・エリゾンドなど、登場するキャラクターは魅力的なので、続編を作れば面白くなるかもしれない。

(原題:THE PRINCESS DIARIES)

2002年1月26日公開予定 みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)

(上映時間:1時間55分)

ホームページ:http://www.disney.co.jp/

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