マップ・オブ・ザ・ワールド

2001/12/14 松竹試写室
シガニー・ウィーバーとジュリアン・ムーア主演のドラマ。
説得力のある見事な演技に唸る。by K. Hattori

 アメリカ中西部の田舎町。町の中心部を少し離れると、そこは広大な農場地帯が広がっている。グッドウィン一家は、そんな町で酪農を営んでいる。夫は農場の仕事、妻は夫を手伝いながら、学校の保健室で生徒の健康管理を受け持っている。排他的なところもある田舎暮らしだが、近くに住むコリンズ家の主婦テレサとアリスは親友同士。娘たちも互いの家を行き来するような、家族ぐるみの親しいつき合いを続けている。だがある夏の日、グッドウィン家に遊びに来ていたテレサの娘のひとりが、アリスがほんの少し目を離したすきに敷地内の池で溺れるという事故が起きる。アリスの応急処置も空しく、幼い少女は息を引き取った。幼い子供にありがちな水の事故。アリスに法的な責任を求める人はいないが、親友の娘を不注意で死なせてしまったという事実が彼女を苦しめ、親しかったコリンズ家との関係も気まずくなる。アリスがそんな苦しみと戦っている時、彼女は思いがけない罪で警察に逮捕されてしまう。彼女が勤めている学校で、子供に性的なイタズラをしたというのだ……。

 ジェーン・ハミルトンの同名小説を、『ギルバート・グレイプ』のピーター・エッジスと『プリティ・ベビー』『さよならミス・ワイコフ』(どっちも古いなぁ)のポーリー・プラットが脚色している。監督は舞台演出家で本作が映画監督デビューとなるスコット・エリオット。製作は『シックス・センス』など数々の大ヒット作を生み出している、フランク・マーシャルとキャスリーン・ケネディのコンビ。主人公アリスを演じているのは、『エイリアン』シリーズのシガニー・ウィーバー。親友テレサを演じるのは、『ハンニバル』のジュリアン・ムーア。他にもクロエ・セヴィニー、ルイーズ・フレッチャー、デヴィッド・ストラザーンなど、何やらすごく豪華な顔ぶれがそろっている。

 僕は原則として映画にハッピーエンドを求める観客なので、この映画が何やら暗いばかりで救いのない話だったら嫌だなと思った。導入部は、何やら嫌な予感がしたのだ。でも映画はちゃんとハッピーエンドになっていて、まずは一安心。ただしこれは、全員が幸せになって良かったよかった……という終わりではない。ヒロインもその家族も友人も、事件を通して心に深い傷を負い、その傷は生きている限り決して癒されることはないだろう。それでも人間は生きていくし、生きていかなければならない。そんな厳しいエンディングになっている。

 妻の逮捕で周囲から村八分にされる夫と子供たちの苦しさ。無実の罪で刑務所に入れられてしまった妻の苦しみ。それが面会室のガラス越しに交錯し、すれ違っていくシーンは見事だった。夫と妻は同じ事件に遭遇しながら、じつはまったく別のことを考えざるを得ない。ガラス1枚では済まされない決定的な断絶が、そこには生じてしまうのだ。この映画には「言葉にならない気持ちのすれ違い」が多くの場面で描かれる。役者の確かな演技力に支えられた、見応えのあるドラマ作品だ。

(原題:A MAP OF THE WORLD)

2002年2月下旬公開予定 新宿武蔵野館3
配給:アートポート
、アースライズ
(上映時間:2時間6分)

ホームページ:http://www.emovie.ne.jp/

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