バンディッツ

2002/01/08 丸の内ルーブル
ブルース・ウィリスとビリー・ボブ・ソーントン主演の犯罪コメディ。
監督はバリー・レビンソン。そこそこ楽しいけど……。by K. Hattori

 ブルース・ウィリスとビリー・ボブ・ソーントンがユニークな「お泊まり強盗」を演じるコミカルな犯罪映画。お正月第1段作品のしんがりとして公開された映画だが、正月休みが終わった平日最終回とはいえ、大きな劇場に観客が3,40人しかいないという状態はちょっと辛い。公開からまだ10日ぐらいしかたってないんですけどね。ブルース・ウィリスの名前では、もはや日本の観客は振り向きもしないということでしょう。監督は『レインマン』のバリー・レビンソン。共演は『エリザベス』のケイト・ブランシェットだが、彼女とソーントンは『狂っちゃいないぜ』でも共演していたなぁ……。

 物語は銀行強盗の籠城シーンから始まる。異色の「お泊まり強盗」として知られていたジョーとテリーの名コンビが、衆人環視の中で大勢の人質を取って銀行に立てこもっている。周囲は警官隊と報道陣と野次馬でごった返し、アリの這い出る隙間もない。いったい何が彼らをこんな事態に追い込んだのか。「あんな女、殺しておけばよかったんだ」と毒づくテリーに、「そもそも連れてきたのはお前じゃないか」と言い返すジョー。いつしか話題になるのは、ふたりを警察に売り渡したケイトという女のことだ。ここから物語はふたりの回想になり、大胆不敵な刑務所脱獄、警官隊との追跡劇、ふたりにとっての共通の夢であるメキシコのホテル、そして誰もが驚く「お泊まり強盗」の発案へとつながっていく。

 この映画のベースにあるのは『明日に向かって撃て!』であり、『スティング』だろう。劇中には『或る夜の出来事』まで引用されていて、古い映画が好きな連中はニヤリとする寸法だ。大胆不敵な連続銀行強盗事件によって、賞金首のお尋ね者となるふたり。ふたりの前に現れる女を交えた三角関係。南米への脱出の夢。最後は警官隊に取り巻かれて袋のネズミ。主人公たちは一滴の血も流さない、きわめて紳士的な強盗という違いはあるけれど、こうした物語の要素はそのまま『明日に向かって撃て!』からの引用だと思われる。ラストのオチは『スティング』かな。ただしこのオチは、映画の序盤ですっかり底が割れてしまう。あまりにも見え見えだ。

 この映画はちゃんと面白い。その面白さは主人公のジョーとテリーの人物像が醸し出すものであり、演じているふたりの役者が生み出すおかしさだ。強盗をする前にふたりが施す変装メイクには笑ってしまうし、この映画では三枚目を演じるビリー・ボブ・ソーントンの出鱈目すれすれの芝居は次々に笑いを生み出していく。バーの床でバタバタともがくソーントンの姿に、ニヤつかない人がいるだろうか。思わず笑っちゃうよ。でもこの映画は結局「主役ふたりが笑わせる」という部分のみに面白さが集中してしまい、それ以外の面白さが希薄なのは残念。ケイト・ブランシェットが演じるヒロインも、単なる欲求不満の中年女に見えてしまうしなぁ……。

 主役3人をあと10歳ずつ若いキャストで映画化すると、また違った魅力の映画になったと思う。惜しい。

(原題:BANDITS)

2001年12月29日公開 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:20世紀フォックス

(上映時間:2時間4分)

ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/bandits/

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