プライベートレッスン
青い体験

2002/02/05 映画美学校第1試写室
愛と性に戸惑う青年たちのドラマを描く韓国映画。
自覚せざる同性愛の悲劇だと思う。by K. Hattori

 タイトルがそもそも、『プライベートレッスン』と『青い体験』という有名な映画2本の組み合わせ。これだけである年代以上の人には、「十代の男の子が年上の女性に性の手ほどきを受ける」という内容が想像できる。さらに「青い果実、青い欲望、はじめての胸騒ぎ。」「全アジアで発禁処分寸前!」「“韓国のティント・ブラス”が放つ禁断のエロス巨編遂に日本上陸!」「『イエローヘア』『ディナーの後に』『LIES/嘘』は序章に過ぎなかった!」「衝撃のコリアン・ロリータ・エロス巨編最新作!!」などと、扇情的なコピーが並ぶ宣伝用チラシ。だが映画の実際は、こうしたタイトルやコピーとは裏腹な、じつに丁寧な作りの青春映画なのだ。宣伝文句につられて「どんなにエロい映画なんだろう」と、期待に胸と股間を膨らませて映画館に行くと、たぶんそれは一瞬にしてぺしゃんこになってしまうに違いない。確かにベッドシーンは多い。でもそれ自体はあまり見せ場になっておらず、むしろ登場人物の心理描写がこの映画の主体になっているのだと思う。

 田舎の高校で同級生になった、ジャヒョとスインの友情の物語だ。ジャヒョはクラスメートのハラと初体験を済ませるが、大学受験を控えた彼は自分に付きまとうハラを邪険に扱う。複雑な家庭環境のハラは孤立し、校舎の屋上から投身自殺してしまう。一方親友のスインは、新任教師のジョンヘに想いを寄せるが、教師と生徒という間柄もあって彼女に拒絶されてしまう。共に女性との関係で傷ついたふたりは、一緒に都会の大学に進学する。「女性を知るにはセックスしまくるしかない!」と決心したジャヒョは名うての女たらしになるが、その成果として性病の治療で訪れた医院の看護婦ナムオクと親しくなり、彼女と付き合うようになる。一方のスインは未だ童貞で、ジョンヘ先生のことが忘れられずにいる様子。はたしてふたりの愛の行方はどこへ……?

 この映画がテーマにしているのは愛とセックスだが、映画を観てしばらくするうちに、僕は主人公ジャヒョとスインの同性愛的な結びつきに気が付いた。10歳の時に幼馴染みの親友が目の前で事故死するのを見たというスインは、ジャヒョと出会った途端に、彼が死んだ友人の生まれ変わりのように感じる。おそらくスインはジャヒョに恋したのだ。だがそれが「恋」とは自覚されないところに、この映画の悲劇がある。スイン本人は自分のジャヒョへの思いを「友情」だと考えている。だがハラが自殺した時、優しくジャヒョを抱きしめたスインの中には「これで彼を独占できる」という思いがなかっただろうか。ジャヒョが看護婦のナムオクと親しくなると、スインは行きつけの店の女主人を相手に童貞を捨てる。挙げ句の果てに、ジャヒョが眠るベッドの横で、まるで彼に見せつけるかのように彼女と激しいセックスをする。スインが最後に向かった場所も、ジャヒョとの思い出の場所ではないか。ジャヒョはそんなスインの気持ちに気づくが、それを受け入れられずにナムオクを選ぶのだ。

(原題:青春)

2002年3月16日公開予定 
銀座シネパトス、新宿東映パラス3、横浜シネマ・ベティ
配給:アルバトロス・フィルム

(上映時間:1時間45分)

ホームページ:http://www.albatros-film.com/

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