ヴァンパイア・ハンター

2002/02/07 SPE試写室
街道で拾ったヒッチハイカーはヴァンパイア・ハンターだった。
ユニークな設定の青春ヴァンパイア映画。by K. Hattori

 映画創生期から、手を変え品を変え作られ続けてきた「吸血鬼映画」の新作。ハリウッドのB級映画会社で予告編編集の仕事をしているショーンは、姉の結婚式に参加するため車でフロリダに向かう。途中で財布をなくした彼は、「ガソリン代を持つから乗せてくれ」というヒッチハイクの男ニックを車に同乗させる。だがそれからしばらく走ったカフェで、錯乱状態の若い女を拾ったあたりから話がややこしくなる。ニックによれば、彼女は血液の病気に冒されているという。根本的な治療法は、感染源となった者を突き止めて殺すことだ。感染源は吸血鬼。このまま放っておけば、女もまた吸血鬼に変身するだろう。ニックも数ヶ月前に吸血鬼に咬まれて感染し、今は薬品で吸血鬼化の進行を抑えながら、吸血鬼ハンターとしてアメリカ中を放浪しているのだ。そんなことも知らず女に手を咬まれてしまったショーンは、自分も病気に感染して否応なしにこの事件に巻き込まれていく。

 吸血鬼の起源を十字軍のトルコ遠征にしたり、呪いが長い年月を経てウィルスに変化したという設定が面白い。ひょっとしたらこれは、日本映画『リング』から影響を受けた設定かもしれない。呪いがウィルスに変化し、呪いを解けばウィルスも消える。吸血ウィルスは「血液の病気」であり、複数の薬品で病気の発症を抑えることはできても、根本的な治療法が存在しないという設定はHIV(AIDS)にも似ている。こうした吸血鬼の歴史を「奇病」として医学界が認識しているというのも、今までの吸血鬼映画にない斬新さかもしれない。病院の医師は吸血鬼の歴史を知っており、そこではウィルスの発症を抑える薬が簡単に手に入るのだ。でもそこまで吸血鬼の存在が科学的に認知されているなら、警察力を導入してでもさっさと吸血鬼の元締めを捕まえればいいのに。おそらくそれができない理由があるんだろうけれど、それについてこの映画は一言も語っていない。

 こうした新手の吸血鬼を作りながら、移動の便宜を図るために人間の従者がいるという設定は「吸血鬼ドラキュラ」以来の伝統に従っていたりするのが面白い。若手俳優を使った吸血鬼映画というと『ロストボーイ』や『バッフィ/ザ・バンパイア・キラー』などがあるが、この映画にもっとも影響を与えたのはキャスリン・ビグロー監督の『ニア・ダーク/月夜の出来事』かもしれない。西部劇風の乾いた風景の中を吸血鬼たちが車で移動するところが似ているし、吸血鬼の感染を「血液の問題」と捉えるところが似ている。吸血鬼が日光を浴びて炎上爆発するのも、『ニア・ダーク』そっくり。

 それにしても、アメリカ人は吸血鬼が好きだ。おそらく吸血鬼を介して「悠久のヨーロッパ中世史」とつながるあたりに、アメリカ人が魅力を感じるのではなかろうか。同じような吸血鬼でも、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のメキシコ吸血鬼は別種なのだ。

 映画のできは水準レベルだが、ヒロインがただのお荷物になっているのが残念。でもそこそこ楽しめます。

(原題:THE FORSAKEN)

2002年4月13日公開予定 シネマ・メディアージュ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 配給協力:メディアボックス

(上映時間:1時間30分)

ホームページ:http://www.spe.co.jp/movie/smp/

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