ギガンティック

2002/02/28 シネカノン試写室
テーブル・サッカーがあれほど白熱するゲームだったとは!
仲間3人で過ごすハンブルグ最後の夜。by K. Hattori

 『ウィンター・スリーパー』と『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ監督がプロデュースした、ドイツ・ハンブルグを舞台にした青春映画。監督・脚本は俳優としてハリウッド映画にも出演しているセバスチャン・スキッパー。主人公はファーストフード店で働くリコ、自動車修理工のウォルター、病院で看護士として働いていたフロイドの3人だ。彼らは出身も違えば仕事も違うが、なぜか馬が合う親友同士。特に一緒に何をするということもない。車でドライブしたり、サッカーをしたり、クラブに言ったり、ビールを飲んだりするだけだが、3人はそれがとにかく楽しくてしょうがない。その楽しい日々が、ずっと続くと思っていた。ところがその日の夕方、フロドが突然「明日この町を出る」と言い出す。じつは彼は今日まで2年間、保護観察のため町から一歩も外に出ることが許されなかったのだ。しかし今日の昼間、ついにその処分が解けた。彼は勤めていた病院も辞めて、明日は貨物船で外国目指して旅立つという。突然のことにリコとウォルターは驚くが、フロイドの決心が固いのを知ると、3人で過ごす最後の夜を思い出深いものにしようと街に飛び出していく。

 明日は旅立ちの日。今日が仲間同士で過ごす最後の夜。つい最近も『Departure』という映画を観たばかりだが、このシチュエーションの青春映画は多い。『バウンスkoGALS』という傑作があったっけ。他にもたくさんあるだろう。この手の映画では、大小さまざまなエピソードが数珠繋ぎに現れては消える。主人公を取り巻く個性的なキャラクターたちが、印象深い数々のエピソードを形成していく。要するに話はどうとでもなるのです。どうせ数時間後には、仲間たちは離ればなれになる運命。その短い時間の中に、たくさんのエピソードをぎゅっと凝縮していく。そこではどんな馬鹿げたことも、どんな荒唐無稽なことも起こりうる。「一晩の出来事」という映画の魔法の中では、ありとあらゆる出来事が許容される。

 こうした映画では、数々のエピソードに負けない強烈な個性と存在感を持つ主人公たちの存在が欠かせない。この映画に登場するリコ、ウォルター、フロイドの3人組は、二枚目でも何でもない。どちらかといえば、イケてない3人組でしょう。でもそれぞれの個性がきわめて明快に描かれているため、映画を観ている側はすぐ彼らに感情移入できるし、彼らのことが好きになる。エルビス狂のスタントマンたちをからかったり、凄腕のハスラー相手にサッカーゲームをしたりする3人にくっついて、映画を観ている側も彼らと一晩を過ごしたような気分が味わえる。白々と明けてくる朝の空気を感じられる。

 説明調の台詞はまったくないのだが、小さな台詞やシーンによって、登場人物の背景を観客に提示する巧みな脚本。テーブル・サッカーがあれほどエキサイティングなスポーツ(?)だということがわかるだけでも、この映画は一見の価値ありだ。ちなみに掛金の840マルクは、日本円にすると5万円程度だと後で知った。

(原題:GIGANTIC)

2002年5月下旬公開予定 シブヤ・シネマ・ソサエティ
配給・宣伝:クライドフィルムズ

(上映時間:1時間21分)

ホームページ:http://www.clydefilms.co.jp/

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