白い犬とワルツを

2002/03/07 東映第1試写室
テリー・ケイのベストセラー小説を仲代達矢主演で翻案映画化。
夫婦愛というより、親子のドラマになっている。by K. Hattori

 日本でもベストセラーになっているテリー・ケイの同名小説もとに、舞台を日本に移し替えて作られたファンタジックなヒューマンドラマ。この原作はアメリカでも1度テレビ映画化されていて、その時の主演はヒューム・クローニンとジェシカ・タンディだった。日本版では主人公の老夫婦役に、ベテランの仲代達矢と藤村志保が配役されている。ふたりの子供たちを演じるのは、若村麻由美と南果歩。夫婦と親しくしていた在日の青年役に豊原功補。脚本は森崎東で、監督はこれがデビュー作の月野木隆。音楽を加古隆が担当している。

 物語の舞台は水田が広がる西日本の小さな町。樹木医をしている中本英助は、妻の光恵とふたり暮らし。長女と次女は結婚して家を出たが、最近次女は離婚して子供と暮らしているようだ。ある日彼が家に戻ってみると、妻が庭で倒れていた。病院に運ばれた妻は、最後に指を3本立てて「さんにん」とつぶやき息を引き取る。妻に向かって「わかったわかった、安心せい」と言った英助だったが、妻の言葉の意味はよくわからないままだ。家にひとりきりになった彼を心配し、次女が一緒に住もうと言い出すが、英助はそれを断ると小さな作業小屋でひとり暮らしを始める。その時から、彼の前に1匹の白い犬が現れるようになる。だがその犬は、英助にしか見えない。「犬がおる」という英助の言葉を子供たちは気味悪がり、彼が妻の死というショックでボケ始めたのではないかと考える。はたして犬は本当にいるのか。妻が言い残した「さんにん」という言葉の意味は何なのか。

 原作を読んでいないのでどこをどうアレンジしたのかわからないが、映画はいかにも日本的な湿度の高い風景の中で、親と子を軸とした濃密な人間関係を描いていく。原作の紹介では必ず「夫婦愛」という言葉が出てきたように思うのだが、映画は夫婦の話というより、やはり父と息子、父と娘という縦のつながりを媒介にしながら、夫婦の絆を描いている話のように思える。このあたりが、日本とアメリカの家族の違いなのかもしれない。ところがこの映画、英助と光恵の夫婦関係も異様なほど仲睦まじく描かれていて、それが「翻案劇のにおい」を出している部分もある。こんなにベタベタした夫婦がいたら、かえって気持ち悪いと思うけどなぁ。もちろん演じているのが仲代達矢と藤村志保だから、このアツアツの老夫婦もそれなりにサマにはなっている。でも「サマになる」というのと、「それがリアルに見えるか」というのは別の話じゃないだろうか。南果歩が演じている娘夫婦の描写に比べても、老夫婦の仲のよさは突出しすぎ。ここはもうちょっと抑えた方がよかったと思う。

 物語の中に在日に対する差別の問題を入れるなど、脚本はかなり意欲的。しかしこうした意欲が、シンプルなはずの物語を小さく蛇行させる。これは欲張らず、夫婦と子供の問題だけに、物語を集中させた方がよかったのではなかろうか。物語を欲張った結果、映画の後半では肝心の白い犬の存在感も希薄になってしまった。

2002年4月13日公開予定 丸の内東映他・全国東映系
配給:東映

(上映時間:1時間39分)

ホームページ:http://www.toei.co.jp/white_dog/index.htm

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