モンスーン・ウェディング

2002/03/20 松竹試写室
ベルリン映画祭で金獅子賞を受賞したインド映画。
親戚の結婚式に集まった人々の集団ドラマ。by K. Hattori

 昨年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したインド映画。インド映画というと歌って踊る3時間以上のミュージカル映画が有名だが、この映画は『サラーム・ボンベイ!』『ミシシッピー・マサラ』『太陽に抱かれて』『カーマ・スートラ/愛の教科書』などの作品で知られるミラ・ナイール監督の作品。主人公たちの愛情表現が感極まると、突然2,30人のダンサーが登場して踊りまくるとか、歌を歌い始めるとなぜか主人公たちが世界一周してしまうといった「マサラムービー」とはちょっと違う。だからといって「歌も踊りもないインド映画なんて寂しい!」と早合点してはいけない。あるカップルの結婚式までを追うこの映画は、たっぷりの歌と、たっぷりの踊りがちゃんと入っている。こればっかりは、インドの国民性のようです。

 物語の中心になるのは、デリーに住むビジネスマン、ラリット・ベルマの一人娘アディティの結婚式。お相手はアメリカに住んでいるインド人青年だ。結婚式まであと4日。アメリカやオーストラリア、それにインド各地に暮らす親戚たちが、続々とベルマ家に集まってくる。いささか急に決まった結婚だが、インドの結婚式は行事が多いから家中がてんてこ舞い。だが花嫁のアディティにはひとつの重大な秘密があった。じつは彼女は働いている放送局で既婚の司会者と不倫関係にあり、未だその相手と完全に切れていない。不毛な恋に決着を付けるため、親の勧める結婚に後先考えず飛びついたというのが、彼女の正直な気持ちなのだ。結婚式の準備が整えば整うほど、恋人に会いたい気持ちは募る。周囲が祝福の言葉をかけ、家中が花で埋め尽くされても、アディティの気持ちは全く晴れないのだった……。

 花嫁の不倫というとんでもない爆弾を抱えたまま、物語は着々と結婚式に向けて進んでいく。その合間にも、花嫁の従姉妹リアの秘密、ベルマ家のメイドと結婚式をコーディネイトする男の間に芽生えた愛の行方、オーストラリアから来た青年とインド美女のロマンスなど、さまざまなドラマが交錯していく。限定した時間と限定された場所に、大人数が右往左往して、複数のドラマが同時進行……。これは典型的なグランドホテル形式です。

 この映画に登場するのは、インドの典型的な中流家庭の姿です。地元の名士というわけじゃないし、資産家というわけでもない。娘ひとりを嫁がせる費用の捻出に、あちこちから借金している父親がなぜ上流階級であり得ましょう。それでもこの家は広大な庭付きの屋敷に住み、使用人を何人も雇っている。これに比べると、日本の自称中流は貧しいよなぁ。まぁ社会構造の違いということでもあるんだけど。でも僕も今度生まれ変わるなら、日本の中流よりはインドの中流家庭に生まれたい……。

 映画のクライマックスは土砂降りの雨。雨はすべてをぶち壊しにすることもあれば、過去に降り積もった汚れをきれいに浄化し、その中から新しい生命を生み出すこともある。ずぶ濡れの花嫁と花婿が、じつに爽やかです。

(原題:Monsoon Wedding)

2002年初夏公開予定 Bunkamuraル・シネマ
配給:メディア・スーツ

(上映時間:1時間54分)

ホームページ:http://www.ld-dvd.co.jp/

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関連リンク:ミラ・ナイール監督

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