EXITイグジット

2002/03/28 映画美学校第2試写室
リュック・ベッソンがプロデュースしたサイコスリラー映画。
絵作り先行が少々鼻につくけど……。by K. Hattori

 リュック・ベッソンがプロデュースしたサイコスリラー映画。監督のオリヴィエ・メガトンにとっては、これが長編デビュー作。これ以前には短篇映画やビデオクリップ、コマーシャルなどの仕事をしていたという。(プレスによれば)本作のラッシュフィルムを観たベッソンが、自らプロデュースを買って出たという話だから、企画段階からこの映画にベッソンが噛んでいたわけではなく、メガトン監督の才能に何かを感じたベッソンが、その映画製作をバックアップしたというところだろうか。メガトン監督は1965年生まれだから、もう30代後半。決して若くはない。(僕と同世代の人間に、若くないと言うのはちょっと辛い。でも事実だからしょうがない。僕も若くないのだなぁ……。トホホ。)若き才能とちやほやされるような年齢でもなく、かといって職人的な手堅さを発揮しても誰も驚いてくれないという、なんだか微妙な年代だろうなぁ。ま、それはそれとして……。

 物語はひとりの囚人の告白から始まる。刑務所の面会室で厳重にモニター監視されながら、拘束用の椅子に固く手足を縛られている男。彼が語るのは、スタンという気の毒な男のことだ。6年前に猟奇殺人事件の犯人容疑で逮捕されたスタンは、証拠不十分なまま長年精神病院に入れられていた。担当精神科医の尽力で病院を出たスタンは、それと同時に再び始まった連続殺人事件の容疑者として、警察に再度マークされるようになる。いったい犯人は誰なのか。スタンには自分が殺人をした覚えなどさらさらない。だが恐ろしいことに、スタンには自分が「殺人をしていない」記憶もないのだ。ひょっとして、自分が犯人なのかもしれない。そんな恐れを感じながら、スタンは心の迷宮をさまよい始める。

 映画の作り方やドラマの語り方は、自己流にアレンジしたデイヴィッド・リンチという雰囲気。話の辻褄が合うか合わないかのギリギリを、絵作りのテンポでずんずん先に進めていくような強引さがある。この強引さがドラマ作りの「力強さ」になるといいのだが、この映画は残念ながらそのあたりがただひたすら強引で、物語の構成をぶっ壊しながら進行していくような乱暴さとも受け取れるレベルだ。特に映画の前半から中盤にかけては、絵作りの奇抜さで観る人を驚かせようという意欲ばかりが全面に押し出されてしまい、映画を観ていてかなりしんどい思いをする。手塩にかけた自慢の品はちらちらと観客に提示するから観客は何事かと思って身を乗り出すのに、この監督は名前がメガトンと言うだけあってか、かなり押しつけがましいのだ。「ほら」「どうだ」「それみろ」と、観客の鼻先で自分の仕事ぶりをひけらかす。その態度に、観ているこちらは少々辟易する。

 こうしたしつこさは『ヴィドック』のピトフ監督からも感じたものだから、ひょっとすると現在のフランスではこういう押しつけがましさが流行なのかもしれない。CMで30秒や1分ならこうした押しつけがましさもいいけれど、1時間越えるとちょっとねぇ……。

(原題:EXIT)

2002年4月27日公開予定 シネマメディアージュ
配給:K2エンタテインメント

(上映時間:1時間52分)

ホームページ:http://www.cinemart.co.jp/exit/

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関連リンク:リュック・ベッソン

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