弘兼憲史シネマ劇場「黄昏流星群」
同窓会星団
2002/03/29 イマジカ第2試写室
弘兼憲史の同名コミックを神田正輝と原日出子主演で映画化。
脚本の芯がない。原作の解釈の間違いでは? by K. Hattori
弘兼憲史がビッグコミックオリジナルに連載中の「黄昏流星群」から、2つのエピソードを選んで映画化したものの2本目。もう1本の『星のレストラン』はまずまずの出来だったので今回も期待していたのだが、こちらはどうもいただけなかった。監督は『卓球温泉』の山川元。脚本は監督本人と『がんばっていきまっしょい』の磯村一路。もともと原作の完成度が高いのに、この脚本はそれをいじくり回して安っぽいテレビドラマのようになってしまった。映画化するとき、原作をいじるのは構わない。そのいじり方に合理的な根拠があるなら、いくらでもいじくり回せばいい。『星のレストラン』も原作をいじっているけれど、それは合理的ないじり方だったと思う。でもこの『同窓会星団』は、なぜこんな脚色にしたのかと首をひねるような改変が多いのだ。
25年ぶりに同窓会で出会った高校時代の恋人同士が主人公だ。神田正輝演じる砂川健治は、小さな商社の部長職。フィリピン赴任時代に交通事故で妻を亡くし、今は小学生の息子とふたり暮らしだ。原日出子演じる小倉美智子は、数年前に夫が不倫相手と駆け落ち同然に家を出て行ってしまい、今は高校を退学して家でブラブラしている息子とふたりで暮らしている。同窓会で再会したふたりは交際するようになるが、ふたりがデートしている最中に砂川の息子が交通事故で入院してしまう。事故現場に通りかかって助けたのは、偶然にも美智子の息子だった。息子たちは自分たちの両親が付き合っているとも知らず、病室に見舞いに訪れたり、勉強を見てもらったりという親しい関係になる。ところがある夜、砂川と美智子のデート現場を、美智子の息子が目撃する……。
映画が原作と一番大きく変えている点は、同窓会で出会った早々、砂川と美智子が互いを強く意識するということだろう。でもこんなの嘘だと思う。ふたりは高校を卒業して互いに何の連絡も取らなかったわけだし、それぞれに別の相手と結婚して家庭を持ってもいる。砂川は死んだ妻を愛していたし、だからこそその死は彼にとって『自分の上におおいかぶさっていたもの』にもなるのだ。高校時代に何があったにせよ、それは一度完全に終わっている話。ふたりは別々の人生を歩み、別々の幸せを手に入れようとして挫折する。そんな男女が巡り会って、何もないところからふたりの関係を作り上げていこうとするのがこの原作がもともと持っていた原則のはず。それが映画では、「高校時代に好きだった人にまた会った。今でも素敵な人だなぁ。今でも好き!」みたいな話に変えられてしまっているように思う。
原作は携帯電話を使ったプロポーズでハッピーエンドになるのだが、映画はこれを橋での再会で閉じている。これは導入部の橋でと対称形の構成にすることで、映画全体をぎゅっとまとめる役目を果たしている。これはいい脚色かもしれない。でもそうすると、あのふたりはなぜあの橋のところでああもあっけなく別れてしまったのかというのが解せないのです。どうもなぁ……。
2002年5月18日公開予定 シネマメディアージュ他・全国
配給:日本ビクター 宣伝:Kプレス
(上映時間:1時間34分)
ホームページ:http://www.jvc-victor.co.jp/movie/tasogare/
DVD:同窓会星団
|