悪魔の毒々モンスター
新世紀絶叫バトル

2002/04/19 シネカノン試写室
シリーズ第4作目。映画『スパイダーマン』の直後に観ただけに感慨が。
安い、下品、汚い。三拍子揃ったヒーローが大活躍。by K. Hattori

 つい先日『スパイダーマン』の試写を観たり、仕事がらみで映画の背景になるアメコミの世界を調べたりしていたところなので、この映画には思わずニヤニヤしてしまった。『悪魔の毒々モンスター』は'84年にインディーズ映画会社トロマが生み出したスプラッターコメディだけれど、その成り立ちはすべてアメコミのパロディなのです。過去3本作られている映画を、じつは僕は1本も観ていないのですが、そんな予備知識なしでも出会ったその場から楽しめるのがアメコミ風かもしれない。もちろん、過去の経緯を知っていた方がより楽しめるのもアメコミと同じでしょうけれど……。

 この映画はやたらと血糊や臓物が飛び交うドロドログチャグチャの残酷描写が売りなのですが、じつは今回『スパイダーマン』を撮ったサム・ライミ監督だって、デビュー作は血みどろのスプラッタ映画『死霊のはらわた』だった。ライミ監督もアメコミが大好きらしく、今から10年以上前に、やはりアメコミ風のヒーローを主人公にした『ダークマン』という映画も作っている。つまり『悪魔の毒々モンスター』も『スパイダーマン』も、ルーツはまったく同じようなものなのです。この映画は今から2年前に製作されたものですが、なぜ今このタイミングで日本公開するかと言えば、それは当然『スパイダーマン』の公開タイミングに合わせたのでしょう。

 映画の導入部に過去の経緯を説明するナレーションを担当するのは、『スパイダーマン』の生みの親であるスタン・リー。この人は映画『スパイダーマン』で製作総指揮を担当している人。「過去の続編2本はあまりにお粗末なのでなかったことにします」という強引な説明や、主人公がパラレルワールドに迷い込むとか、ヒーローそっくりの偽者(パラレルワールドからやってきた悪毒モンスター)という設定も、スパイダーマンの原作コミックに似たようなものがあったような……。今回の映画にはトロマの別作品『カブキマン』の主人公も登場するのですが、こうした作品間での人物往来も、アメコミの世界では日常的に行われているものだしなぁ……。

 映画は全体に、とにかく安っぽく、とにかく下品で、とにかく不潔だ。下ネタと差別ネタが全体の8割以上を占めるギャグも、なんとなくお寒い感じがする。'80年代初期には、僕もこうした映画で笑えたと思うんだけど、時代が変わったのか、僕がオジサンになったのか、僕はこの映画でまったく笑えなかった。でも映画の作り手たちが、とりあえず観客を飽きさせずにおこうとあれこれアイデアを絞っている様子は伝わってくる。困ったときは人殺しと流血。もう少し困ると女性のヌード。それが特別面白くはないけれど、作り手の努力はわかる。

 同じグチャグチャドロドロの低予算スプラッターコメディから出発して、トロマのロイド・カウフマンは未だに『毒々モンスター』を作り続け、サム・ライミはコロンビア映画で『スパイダーマン』を撮っている。アメリカ映画界のダイナミズムがかいま見える1本でした。

(原題:CITIZEN TOXIE: THE TOXIC AVENGER IV)

2002年夏公開 シブヤ・シネマ・ソサエティ
配給:クライドフィルムズ

(上映時間:1時間48分)

ホームページ:http://www.clydefilms.co.jp/dokudoku/

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