マジェスティック

2002/04/25 ワーナー試写室
海岸に流れ着いた記憶喪失の男が戦争で死んだ男と間違われる。
ジム・キャリー主演のヒューマンドラマ。泣けた! by K. Hattori

 『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』のフランク・ダラボン監督最新作は、またもや映画ファンを泣かせる仕掛けが随所にちりばめられた、2時間33分のヒューマンドラマだ。映画ファンを無条件に感動させてしまうモチーフとして、「映画の主人公が映画ファン(映画マニア)」「映画の製作現場を舞台にした映画」「映画館が舞台になっている映画」「映画の中にちりばめられた古い映画の引用」というのはそれだけで得点が高くなる。この『マジェスティック』は、これらの要件をすべて備えているという意味で、まさに映画ファン泣かせなのだ。逆の言い方をすれば、少しずるい。ずるいけれども、そこにあざとさはあまり感じない。そのあたりが、フランク・ダラボンの上手さかもしれない。

 1951年。ハリウッドでB級映画の脚本家として頭角を現しつつあったピーター・アプルトンは、まったく身に覚えのない理由で非米活動委員会から共産主義者だと名指しされる。このことは、彼のキャリアの死を意味していた。腹立たしげに車を飛ばすピーターは事故を起こして川に転落。とある海岸で目を覚ましたとき、彼は一切の記憶を失っていた。助けてくれた老人の案内で近くの町にたどり着いた主人公は、9年半前に出征したまま戦地で行方不明になったルーク・トリンブルだと勘違いされる。戦争で60余名の若者たちを失った町は、英雄のひとりが生還したと聞いて大喜び。ルークの父親ハリーは、息子と一緒に映画館「マジェスティック」を再建すると大張り切り。かつての恋人アデルも、彼に何とか記憶を取り戻してほしいと願うのだが……。

 物語の背景になっている1951年という時代は、戦後ハリウッドの黄金時代といってもいい。この映画には『アフリカの女王』『巴里のアメリカ人』『欲望という名の電車』などが引用されているが、これらはすべて1951年に製作された映画だ。平和で物質的にも繁栄していた'50年代の古き良きアメリカ。しかし同時にそこには、未だ癒えぬ戦争の傷跡が生々しく残り、共産主義の台頭に怯えて「赤狩り」という名の現代の魔女狩りを行ってもいた。この映画はそんな'50年代アメリカの暗い面を描いている。主人公が流れ着いたローソンの町には、若者の姿がほとんどない。町全体が巨大な老人ホームといったありさまだ。若い男たちの多くは、戦争に行ったきり戻ってこなかった。町の通りには今でも戦没者に手向けた喪章や写真が飾られ、墓地には真新しい墓標の群れが並んでいる。活気のなくなった町から、都会へと人は流れて戻ってこない。そこに死んだはずの町の英雄が戻ってきたのだ。町はその喜びに息を吹き返す。

 ジム・キャリーのシリアスな演技には最近定評があるけれど、今回の映画でも記憶をなくした男という難しい役柄を見事にこなしている。ルークの父親ハリーを演じたマーティン・ランドーが絶品。息子の帰還を静かな歓喜で迎える場面の表情など、小さな場面だけれど忘れがたい表情を見せてくれる。見応えのある映画でした。

(原題:The Majestic)

2002年初夏公開予定 丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース 宣伝:レオ・エンタープライズ

(上映時間:2時間33分)

ホームページ:http://www.themajestic.jp/

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