今昔伝奇
座敷童 百物語

2002/05/22 映画美学校第2試写室
連作時代劇『今昔伝奇』の第2弾。百物語をしていたら本当の妖怪が!
短い時間の中にいろいろなアイデアを詰め込む面白さ。by K. Hattori

 NAKA雅MURA脚本による連作時代劇映画『今昔伝奇』の第2弾は、『大怪獣東京に現わる』『岸和田少年愚連隊/カオルちゃん最強伝説』などユニークな作品で知られる宮坂武志監督が演出を担当している。物語は黒澤明の『椿三十郎』風のオープニングだ。森の中の小さな堂を、一夜の宿にしていた旅の浪人は、雨の中を駆けてくる数人の足音に目を覚ます。追っ手か? だがやってきたのはまだ若い村の百姓5人だった。彼らは風呂敷包み一杯のロウソクを堂に持ち込み、次々に怪談を語ってはロウソクを吹き消す「百物語」に興じようという趣向なのだ。これを面白がった浪人は、自分も彼らの中に加わって怪談話に花を咲かせ始める。だがそれぞれの話が一巡したところで、浪人は奇妙なことに気づいた。ほこらにやってきた百姓は確か5人だったはずなのに、今ここにいるのは自分も含めて7人なのだ。百姓がひとり増えている。いつの間に? いったい誰が? これは座敷童(ざしきわらし)と同じ妖怪に違いない。百姓たちは全員が顔見知りだと言うが、それは妖怪の不思議な力でそう思わせられているだけの話。いったい妖怪はどいつだ?

 物語の狂言回しとなる浪人を演じるのは、扮装から仕草まですっかり三船敏郎をコピーしてきた感じの小沢仁志。大胆不敵な悪党づらの彼が、今回は妖怪に翻弄されて時にユーモラスな顔を見せるのが笑わせる。映画の前半は萩尾望都の「11人いる!」を思わせるサスペンス。仲間の中に得体の知れない異分子が紛れ込んでいるのに、それが誰だかわからないという恐怖。仲間内に芽生える疑心暗鬼。やがて百姓のひとりが殺されると、物語は殺人犯を捜すミステリーに変わる。人数がひとり多かろうと少なかろうと、それに何の実害もなければ、多少気になりつつも放っておけばいい話だ。だがその「誰か」が仲間をひとりずつ殺していくとしたら、「誰か」がいったい誰なのかを突き止めずにはいられなくなる。ところが第2の殺人が起きたところで、映画は観客の前にあっさりと犯人が誰かをバラしてしまう。ここから映画はさらに様相を変えて、怪談話に盛り込まれた遠い過去の真実、さらには時空を越えた復讐譚へと変貌していく。

 上映時間は1時間26分。それでこの内容という充実感。登場人物は限定され、舞台も堂の中だけというきわめて小さな範囲なのに、この映画が持つ物語の広がりはどうしたことか。映画を観ていても、画面がまるで狭苦しく感じられないのだ。なかなかすごい監督ではないか。登場人物の性格付けも明確で、それぞれのキャラが粒ぞろい。これは脚本の巧みさに加えて、各俳優に対する演技指導が的確だからだと思う。各人物の感情の動きが、じつに自然なものとして受け止められるのだ。

 映画終盤になって台詞で物語を引っ張っていくあたりは、いかにもNAKA雅MURAの脚本らしい。『大怪獣東京に現る』にも同じような場面があったっけ。最後のオチを「な〜んだ」と思う人も多いだろうが、ここまで話を広げると最後のオチはこうしたものの方がいいのだ。

2002年7月6日公開予定 テアトル池袋(レイト)
配給:グルーヴコーポレーション 宣伝:リベロ

(上映時間:1時間26分)

ホームページ:http://www.garinpeiro.com/

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