ピンポン

2002/05/22 映画美学校第1試写室
松本大洋のコミックをCGを駆使して完全映像化した青春映画。
主演は売れっ子の窪塚洋介。脚本は宮藤官九郎。by K. Hattori

 松本大洋の人気コミックを、『GO』の窪塚洋介主演で映画化したスポーツドラマ。タイトルからもわかるとおり、テーマになっているのは卓球だ。子供の頃から卓球一筋の高校生・星野裕(通称ペコ)と、同じ卓球部に所属する幼馴染みの月本誠(通称スマイル)。ペコが「卓球でこの星の一等賞になる!」とひたすら楽しそうなのに対して、スマイルは「卓球なんて死ぬまでの暇つぶしです」とクールな態度。スマイルは卓球選手として天才的な素質を持ちながら、卓球に対するこの消極的な態度と、相手の弱みにつけ込めないという優しい性格が災いしてなかなか頭角を現せない。特に幼馴染みのペコに対して、いつも本当の実力が発揮できないまま萎縮してしまうのだ。幼い頃にイジメられっ子だったスマイルをいつもかばい、卓球を教えてくれたのはペコだった。スマイルにとってペコは永遠のヒーロー。だがそのペコが、大好きな卓球で大きな壁に突き当たってしまう。

 監督の曽利文彦はこの映画がデビュー作だが、『未知との遭遇』で映画開眼し、その後も日本とハリウッドを股にかけてCGやデジタル合成の第一線で活躍してきた人物。この映画では激しい卓球の試合を、CGを使って迫力たっぷりに描き出す。卓球とCGと言えば『フォレスト・ガンプ』が有名だが、この『ピンポン』はそれとは比較にならないほど熱い戦いだ。卓球台の上を猛スピードでピンポン球が往復するのだが、その軌道が大きく弧を描いて飛ぶさまは、超音速の空中戦を見ているような迫力がある。『SF映画のようにCGを全面に出さずに、でもCGを使わなくては成立できない映画が撮りたくて選んだ作品』と監督自らが述べているように、この映画をCGを使わずに作ると、少なくとも試合のシーンのこの迫力は生み出せなかったと思う。プロの卓球選手を使って試合シーンを撮り、細かくカットを割って俳優のクローズアップ映像やアクションを加えていくという手法には、おのずと限界があるでしょう。

 脚本は『GO』の宮藤官九郎。生き生きとした台詞の掛け合いが、荒唐無稽な卓球アクションの世界に生々しさとユーモアを与えている。ただし僕には、主人公のペコというキャラクターがよくわからなかった。窪塚洋介もよくわからないまま、このキャラクターを演じているんじゃないだろうか。彼に比べると、ARATAが演じているスマイルや、サム・リーが演じるチャイナ、中村獅童演じるドラゴン、大倉孝二のアクマ、竹中直人のバタフライ・ジョーなど、周辺の人物の方がよほどリアルに感じられる。まぁこうした多種多彩な顔ぶれをまとめる芯としては、ペコのような超然としたキャラクターが必要ということなのかもしれないなぁ。

 映画のクライマックスは、ペコとドラゴンの対決。ただし心理的なクライマックスはその後のペコとスマイルの対戦にあるわけで、そこをまたぎ越していくこの映画の結末には、画竜点睛を欠くきらいがある。これは脚本の問題でもあるし、演出の問題でもあると思う。

2002年夏公開予定 渋谷シネマライズ他・全国
配給:アスミック・エース

(上映時間:1時間54分)

ホームページ:http://pingpong.asmik-ace.co.jp/

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原作本:ピンポン(松本大洋)
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