ラッキー・ブレイク

2002/05/28 東宝第1試写室
『フル・モンティ』のピーター・カッタネオ監督、待望の第2作目。
ミュージカル公演を利用して脱走する囚人たち。by K. Hattori

 大ヒット作『フル・モンティ』のピーター・カッタネオ監督最新作。『フル・モンティ』では主演のロバート・カーライルやトム・ウィルキンソンが一躍有名になったし、脚本を書いたサイモン・ボーフォイも売れっ子になった。ところが監督のカッタネオだけは、なかなか監督第2作を発表しなかった。『フル・モンティ』が大好きな人にとって、今度の映画は「待ってました!」と思わず叫びたくなるようなものだと思う。

 物語の主人公は、子供の頃から悪さばかりして何度も刑務所とシャバを往復しているジミーという男。普段はそれほど大きな犯罪に手を出すわけではないのだが、ある時なにをトチ狂ったのか銀行強盗に手を出して失敗し、相棒ルディともどもロング・ラドフォード刑務所にぶち込まれてしまう。そこでルディが立てたのが、刑務所内にあるチャペルを経由しての脱獄計画。どうやってチャペルに侵入するかが問題だったが、刑務所長が囚人たちによる素人芝居をチャペルで上演しようと企画したことから計画が動き出す。芝居の稽古を利用すれば誰にも怪しまれることなく脱獄の準備を進められるし、大道具や小道具に紛れ込ませて脱獄のための道具も運び込みやすい。道具の調達や逃走ルート確保のために、ジミーたちは刑務所内で他にも数名の仲間を誘うのだが……。

 主人公ジミー・ハンズを演じるのは、『ウェイクアップ・ネッド』のジェームズ・ネズビット。彼と恋に落ちるアナベル役には、『シックス・センス』のオリヴィア・ウィリアムス。受刑者たちに自作のミュージカル劇「ネルソン提督」を上演させようとするミュージカル好きの刑務所長を演じるのは、映画『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐で知られるクリストファー・プラマー。脚本のローナン・ベネットはテロ容疑者として服役した経験があり、脱走を試みて失敗した経験もあるという。音楽は『フル・モンティ』に引き続いてアン・ダドリーが担当している。

 個性的な受刑者たち。男同士の友情。刑務所内でのイジメ。ジミーと女性カウンセラーの間に芽生えるロマンス。受刑者と家族の絆。ミュージカル。脱走計画。札付き囚人の途中参加。映画にはいろいろな内容が盛り込まれているが、それぞれのエピソードが団子状になるばかりで、少しも転がっていかない。物語の種が蒔かれても、そこから小さな萎びた目が顔を出すだけで、高く伸びていくことがないまま映画が終ってしまったという感じだ。これは脚本や演出云々という以前に、主人公のジミーを演じたネズビットに、映画全体を引っ張るカリスマ性が欠けていたためだと思う。ジミーは三流の仕事しかできない小悪党だが、脱走計画に何人もの人を引き込み、ミュージカル公演に囚人を参加させるためにいろいろな人に声をかけてその気にさせ、カウンセラーのアナベルにも男性としての魅力をアピールしているのだけれど、映画の中のジミーから、僕はそれだけのエピソードを引き出す説得力を感じられないような気がしました。

(原題:LUCKY BREAK)

2002年初夏公開予定 シャンテシネ他
配給:アミューズピクチャーズ

(上映時間:1時間48分|イギリス)

ホームページ:http://www.luckybreak.jp/luckybreak/index.html

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