ザ・プロフェッショナル

2002/05/30 メディアボックス試写室
ジーン・ハックマン率いる強盗団が宝石や金塊を次々に盗み出す。
デヴィッド・マメット監督のかなり硬派な犯罪映画。by K. Hattori

 現代アメリカ有数の劇作家・脚本家であり、『殺人課』や『スパニッシュ・プリズナー』などの監督作もあるデヴィッド・マメットの監督最新作。凄腕のプロたちが計画する大規模な金塊強奪計画と、その後の虚々実々の駆け引きを描いたサスペンスだ。出演者がとても豪華。強盗団のリーダーであるジョン・ムーア役に、大ベテランのジーン・ハックマン。相棒のボビーにデルロイ・リンド、同じく相棒ピンキーにリッキー・ジェイ。ジョンの妻フランに『スパニッシュ・プリズナー』にも出演していたレベッカ・ピジョン。主人公たちと敵対する故買屋バーグマンをダニー・デヴィートが演じ、彼が強盗チームに送り込んだ甥っ子ジミーをサム・ロックウェルが演じている。水も漏らさぬ万全の強盗計画や、その後二転三転する裏切り合いといったプロットはどれも一手ずつ先が読めてサスペンス映画としてはハラハラに欠けるが、これはガッチリ構成されたドラマを、実力派の俳優たちが貫禄たっぷりに演じ切る様子を見物する映画だと思う。ジーン・ハックマンの格好良さ! デルロイ・リンドのほれぼれするような男ぶり! レベッカ・ピジョンの美しさ! それだけ味わえれば十分です。

 ミステリー映画で先読みができてしまうことを、まるで致命的な欠陥であるかのように言い立てる人がいるけれど、この映画の場合は必ずしもそれが欠点になっていないと思う。この映画はドミノ倒し選手権みたいなものなのです。綿密に計画された手順に従って、膨大な数のドミノが床に並べられている。最初のひとつを倒した後、どこからどんなルートを通って最終的にどうなるのかは、観客だって最初から知っている。しかしそれでも、ドミノが計画通りに次々倒されていくのを見るのは壮観だし、凝った仕掛けが次々に成功していく様子を見れば拍手喝采したくなります。段取り芝居を下手な役者が演じれば陳腐きわまりない説明調になってしまうけれど、この映画のように脚本がしっかりしており、しかも役者の実力が備わっていれば、一分の隙もない緻密な芝居の組み立てがむしろ無駄のない機能美すら感じさせるのです。

 計画を完璧に練り上げ、常に予想される事態の二歩も三歩も先を考えているプロフェッショナルたち。あるプランを考えても、それをバックアップするプランを二重三重に張り巡らせる用意周到さ。しかしこれは、非常に孤独な作業です。バックアップのプランを考えるということは、常に「失敗」の可能性を考えていることに他ならない。その「失敗」の中には、仲間の裏切りさえ含まれているのです。プロ中のプロたちは固い絆で結ばれながらも、相手を本当に信用しているわけではない。相手はいつどこで自分を裏切るかわからない。そのための保険をどこかに用意した上で、プロの結束があるのです。

 映画のラストシーンはほろ苦い。でもこのほろ苦さに耐えることができない人間は、プロの犯罪者にはなれないということなのかもしれない。もっとも身近な人間さえ信用しないというのは、かなり寂しい生き方です。

(原題:HEIST)

2002年6月15日公開予定 スカラ座2他・全国洋画系
配給:K2エンタテインメント、ギャガ・コミュニケーションズ 宣伝:シナジー

(2001年|1時間47分|アメリカ)

ホームページ:http://www.theprofessional.jp/

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